法螺と君との間には

 今日も冷たい雨が降る。亜寒帯だから仕方ないのだけど。
 曇った窓を流れる水滴みたいに、小さな嘘とかすれ違いとか誤解とか、重なってしまったね。
 愛はまだここにいるよ。なんて孤独につけこむような言い訳は狡いとわかっているし、引き止めようとしたって振り払われるだろう。
 笑ってくれるなら、悪にでもなんでもなれると思っていたんだ。哀しませるつもりなんてなかったのに……

 って、ああしんど。ガラじゃねえ文体なんぞ使っちやいけねえな。そもそも作風が違う。作風が。いくら嘘書いておいくら万円の稼業だからって、テメエの肩ばっかり凝らせてたらマッサージ代もバカにならねえってもんだ。
 てやんでえ。月夜は素直になりすぎていけねえ。
 なあ、おまえ。

超短編 500文字の心臓
第104回競作「法螺と君との間には」参加作

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