もみじ22 若葉の頃Remix(remixed by 空虹桜)

 みどりさんは、トカゲである。その名は血の色に由来する。みどりさんは成長をしない。みどりさんは生まれてから死ぬまで、高さを、重さを、早さを、みどりさんとして維持し続ける。
 みどりさんはよく涙を流す。血の色をしたみどりさんの涙は、みどりさんの前肢を染める。だからみどりさんの痕跡は夏の嵐の後のように、くっきりと残る。
 みどりさんは嫌う。みどりさんを嫌う。だから、泣かないようにしているけれど、油断をすると勝手に涙が溢れる。若葉が散る。
 みどりさんは考える。隠喩のような足跡を引きずりながら考える。太陽ですら、昇って沈むというのに、自分はいつまで「みどりさん」なのか?
 みどりさんは、歩いていく。振り返ることもなく。点々とつづく足跡が、夕陽に染まって黒くなったことに気づきはしない。気づく必要は無い。

超短編 500文字の心臓
第126回競作「もみじ」もみじ22のRemix
Original by 脳内亭

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