夜夜中

 夜午前8時に目が覚めた。自分でもちょっとビックリ。
 待ち合わせの時間は夜午前0時。準備はそれまでに済ませればいいから、こんなに早く起きる必要はないのだけど、緊張してるのか。それとも、ワクワクしてるのか。
 ゆっくり時間をかけて、カバンに荷物を詰め終えたら夜正午。
 夜昼のニュースで、僕たちの仲間がまた一人逮捕されたことを知る。
 永遠に続く夜を明かしたいだけなのに、社会はどうして僕たちを拒絶するんだろう?
 夜午前0時きっかりに始まった僕たちの計画は、午前5時に朝日を取り戻した。
 暖かくて、穏やかで、涙が出た。
 いつの間にか眠ってしまい、夢から醒めたら夜午後3時。
 太古の世界には、空でデネブが輝いてるのかわからないほど、光が溢れてたらしい。夢の中より、もっと暖かくて、きっと穏やかだったろう。
 戸締まりを確認する。もう、この家には戻って来れないだろうけど、まだ夜午後9時だし。念のため。
 ここから待ち合わせ場所まで、どんなにゆっくり歩いても1時間あれば着く。
 真っ暗な夜夜道を僕はゆく。
 これで最後。もう訪れはしない。

超短編 500文字の心臓
第62回競作「夜夜中」参加作

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