名前はまだない ―first love edition―

「僕だけが知ってる、僕だけのだから、君に教えてなんかあげないよ!」
 そう言って、目一杯くしゃくしゃに彼が笑ったのは、もう七年も前。
 そんだけじゃ探すこともできないよ。と、愚痴ってもはじまらないから、旅へ出ることにした。
 もう十五だもの。まだ子どもだもの。わたしならなにか見つける。彼のかわたしのか、きっとなにか見つける。きっと。

超短編 500文字の心臓
第88回競作「名前はまだない」未投稿作

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