たぶん好感触

 一行目からあなたは、文字が躍る錯覚に囚われる。印刷された活字は躍り踊りて唄う言葉となり、唄が唄を呼び物語を導く。
 二行目にしてあなたは気づく。音を楽譜に写し取るように、光に色を名付けるように、作者は物語を言葉に嵌め込み、文字で切り取ったことに。
 だからあなたは、三行目へ至る前に目を瞑る。しっかりと目を瞑る。

超短編 500文字の心臓
第86回競作「たぶん好感触」投稿作

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