第124回 失われた10年の話(その3)

空虹桜唐突だけど、一般的にウチらの世代って模倣の模倣とみなされてるわけじゃない。(※1)カ
       ッコ良く言うとポストモダンってヤツ?
U・B  >早速読んだばっかの本に感化されたのか。(※2
空虹桜>まぁ、そもそも今のご時世大学の哲学科教授すら自分の哲学を持たず、やれソクラテスはああ言っ
       た、プラトンはこう言ったで学会じゃモメるらしいからね。オリジナルなんて無いっちゃ
       無いわけさ。
U・B  >お前、想像だけで物言うなよ。だいたい哲学科なんてお前の通ってる大学に
       無いし
空虹桜>なんで、アンタがそんなこと知ってんのよ。
U・B  >いや、そこに反応されると話進まんくなるから。で?
空虹桜>そう冷静に返されるとそれはそれで困るんだけどなぁ・・・まぁいいや、それで、なにが言いたいかっ
       ていうと、取りたかった講義が取れなくて、消去法で残った哲学の講義なんてのに、な
       にを間違ったか出てしまってるわけですよ。
U・B  >どうせ、原稿書いてんだろ?お前のことだから。それか本読んでるか。
空虹桜うん。でさ、まぁ、一応こっちも器用にできてるから、人の話は聞いてる訳よ。それなりに。(※3
U・B  >いちいち微妙な間を取るなよ。なんか喋らないといけないかと思うじゃないか。
空虹桜>さすが小心者。で、聞いてるとさ、「本ものの哲学ってなんですか?」とか言ってんの。笑っち
       ゃうわけじゃない。こっちとしてはさ。
U・B  >ハハハ。
空虹桜なんか腹立つからテメェが笑うなや。
U・B  >ヒドい・・・
空虹桜>アンタのことはどうでもいいの。でさ、その哲学の話だけど、だって、そもそもの前提条件が
       おかしいわけじゃない。哲学ならまず「本物なんてあるのか?」あたりから始めるべ
       きでしょ。
U・B  >ほうほう。ようやく話の方向が見えてきたぞ。
空虹桜>そもそも、偽物があって本物があるわけで、逆もまた真。要するにさ、それが
       であればレアであれば、たとえレプリカでも価値があるわけでしょ。
U・B  >需要さえあればな。市場主義経済の基本だ。たとえていうと、栗田貫一。(※4
空虹桜>また、アンタらしいわかりにくいたとえなこと。まぁ、いいや。でさ、ここ「失われた10年」って話を考え
       ててちょっと思ったんだけど、要するにさ
U・B  >本物が無くなった?
空虹桜>と、来ると思ったわけよ。でも、さっき言ったじゃない。そもそも本物ってなに?もっと言っち
       ゃうと、どうして本物と偽物を分ける必要があるの?
U・B  >複製技術が進化して本物と偽物の区別が付かなくなった云々の話ですか?
空虹桜>でもちょっと違う。そもそも偽物と本物の違いは、価値があるか無いかの違いでしかな
       かった。たとえば、金の王冠は金そのものの希少価値があったけど、金メッキの王
       冠にはその質量分だけ希少価値が無いわけじゃない。ン?低いのかな。まぁいいやどっち
       みち意味としてはたいして変わんないから。欧米では浮世絵に東洋の神秘としての価値があ
       って、ぶっちゃけ浮世絵っぽければなんでも良かった。それは未だにハリウッド映
       画で日本人が七:三分けのダメなサラリーマンで登場したり、フジヤマ・サムライ・ス
       シ・ゲイシャで語られてるところに如実に表れてる。
U・B  >「ところかわれば」ってヤツだな。で、そのコードで行くと、価値概念が変わったとか
       で落ち着くわけ?
空虹桜>いや、それで落ち着けたらわざわざウチらが喋ってる意味が無いじゃないのさ!って
       話で、たしかに、今までは主に希少価値が価値そのものだったわけじゃない。言い換え
       るならオリジナリティ
U・B  >著作権ビジネスは未だにそれで保ってるわな。タイトルが違うだけの楽曲が並
       ぶavexとかな。
空虹桜>うん。つまりさ、さっきアンタが言った「価値概念が変わった」ってのは、たしかにあってはいるんだけ
       ど、もっと端的に価値が反転したんだよ。この10年で。
U・B  >それもよくある話じゃないか?
空虹桜>うん。そうなんだけど、ちょっと違う。価値が反転したってことは、今のご時世希少じゃないモ
       ノに価値があるってことなんだよ。つまり、溢れてるモノすべてが同列で同
       じ価値しかない
U・B  >同じだけ高価で、同じだけ安価だと?
空虹桜>うん。だって資本主義ってそういうもんでしょ?希少価値を下げることで差分を利潤として
       獲得するんだからさ。同じ価値で並んでる数多のモノの中からどれを選ぶかなんて、そんなもん
       ソイツの気分次第で、だから価値観の多様化ってのもデータベース化って
       のも全部同じ平面に対する見方の違いでしかない。
U・B  >でもその話、たくさんの人間が共有してるモノこそ価値があるわけだろ?
空虹桜>だからアンタはネットに潜ってるんじゃない?だからみんな携帯電話持ってんじ
       ゃない?だからげんなり至上主義とか宣言することで群れようとしてるんじゃない?(※5


※1 厳密にはもう10コ上の世代あたりな気がするけど、まぁ、そこの最後列ぐらいにはいますな。
※2 ここで、空虹がブックレヴュやってます。
※3 高校だったかで、授業中寝てたにもかかわらず、先生に当てられ、起きるなり答えた強者。
※4 山田康雄亡き今でもルパンを夏休みに放送できるのは彼のおかげで、レプリカが本物になった典型ではないかと。
※5 空虹桜43行(!)U・B19行での圧勝(笑)ここのサイトでやってることは「生産」なのか「消費」なのかってとこに今回は端を発しての展開になってまして、ネット上におけるU・Bにとって最大の問題はこれにつきます。現実はもっとどうでもいいことが山積してますが(苦笑)んで、もちろん、両者ともにこの話がとんでもない矛盾の上で進んでることを自覚してるわけですよ。だって、空虹が途中で何度もオリジナリティを主張してるじゃないですか!お前言ってることと矛盾してるだろ!お前の論調だと、そのオリジナリティさえ誰かと同じ価値観を共有するための方便だろ!ってことで、でも、まぁ一面ついてることは事実ですが。


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