U・B >いよいよ登場11年前に起きた事件。今まで紹介してきたアルバムの中で一番安価に入
手できるはずの(※1)。EAST END × YURIのアルバム「denim-ed soul 2」をク
ロスフェーダ。(※2)
空虹桜>ものものしいなぁ。そんな仰々しく振るネタですか?これ。
U・B >誰がウダウダ言おうと、日本でHipHopというかRapというジャンルをポピュラというか、メジャというか、大衆
化させたというかなのは、やっぱり「ブギーバック」(※3)と「DA.YO.NE」(※4)ッスよ。
空虹桜>でも、始祖は吉幾三なんだよ。(※5)
U・B >その手の話をすると、川柳とか俳諧とか、まぁいいや。「音楽シーンで」とかの冠を付ければOK?
空虹桜>真面目な話をすると、11年経ったのに未だ2MCが男女の組み合わせでメジャになった
グループがいない点でとってもEAST END × YURIってユニットは革新的だし、今でも最先
端だと思う。ともかく、1曲目からガツンと来る「いい感じ やな感じ」
U・B >流行りを受けて出たアルバムの一発目に、自分たちを軽ーくdisったリリックを入れるという。
空虹桜>それもあるけど、このアルバム全体に共通してるイメージというかは「曖昧さ」なんだよね。もちろんそれ
は1995年という時代性に大きく依存してるんだけど、社会や自分たちが所属
するカルチャをdisるってことは、構造的にギャグだしコントなわけでしょ。
U・B >悪意が無いから余計にな。認知されていない社会ではそれが「オモロラップ」で一括りさ
れたけど。
空虹桜>ねぇ。だからってリアルタイムで聴いてた頃にそんな基礎教養があったわけじゃないし、こうやって聴き
直したから言える話ではあるんだけど、とてもコンセプチュアルな曲なんだなぁって。
U・B >続いて2曲目がとても誤解の上で認知されてる気がする「MAICCA-まいっか-」
空虹桜>誤解というか、作者が設計したミスリードにみんな従っただけっていう。「まいっか」で
切り捨てるってのは別に間違った姿勢じゃないとアタシは思うし、そうでもしなきゃやりきれな
いじゃんねぇ。
U・B >しかして、当時よりさらに必死な世の中で「まいっか」なんて言ってたら殴られかねない。
空虹桜>わけわかんないよね。なんも時代が前に進んでないんじゃない?ってね。
U・B >深く考えないで言ってはいるけど、でも実際には結果オーライにも限界あって痛い
目見るんだだいたいってわかってるし、だったらやる時はやるって程度の覚悟はある
わけですよ。俺たちにも。(※6)
空虹桜>ホントに社会が成熟して豊かになってるなら(※7)、そんなこと言われなくても理解できな
きゃダメなんだけどね。
U・B >だども、不意を突いてシリアスになる3曲目「SO LONELY」
空虹桜>シリアスっていうか、歌モノじゃん!っていう。いわばglobe状態。
U・B >決定的な差はたしかTPD出身(※8)のハズなのにYURIがあんま音取れてない。
空虹桜>ええ〜、これはむしろそこが肝なんだと思うんですけど。
U・B >肝ッスか?
空虹桜>きっとね。唄が上手いのは絶対条件じゃないから。それにホラ、ロンリィなわけですもの。SOが
付くほどに。このタイトル自体が先見性の実体だっていうのはちょっと危険だけど。
U・B >わかってるような難しい言葉遣いは止めるように。あんま内容が無いことぐらい俺でもわかりますか
ら。4曲目「GROOVIN'(remix)」なんとなくベーシック。
空虹桜>自分の生い立ちやらなんやらをライムしてくっていうね。ライヴの一発目かラス前あたりに持ってきた
いところ?
U・B >わりと。
空虹桜>そういえば、今さらだけど、YURIって今なにやってるの?
U・B >知らん。
空虹桜>え〜。調べときなさいよ。
U・B >気が向いたらな。(※9)
空虹桜>とりあえず、不意にこれを聴かせたり、なんも知らないKIDSにこれを聴かせたりしたら、別になんの違
和感もなく受け入れられちゃうんじゃないかなぁって軽い妄想を抱く曲。
U・B >ぶっちゃけ、あの当時あった「ラップだ・ラップじゃない論争」ってなんだったん?
空虹桜>過渡期の垢。青春なんてそんなもんよ。
U・B >ほんのりわかる。5曲目が「Newcomer」で、わりにインストゥルメンタル(※10)っぽい感じ。
空虹桜>こゆトラックが入ってると安心するよね。
U・B >いかにもHipHopって感じはする。んで今回最後は、アルバムタイトルとも関連してくる「denim-ed
soul」HipHopスタンダードな自慢話なんだけど、自覚が見える。
空虹桜>ね。結果論的に言っちゃうところの「売れちゃった」っていうのが。
U・B >ああはいはい。なんか思いもよらず売れちゃって、フロントランナにされちゃったっていう。
空虹桜>違う。それは自覚的にEAST ENDって名付けた人間の思考じゃない(※11)。
U・B >となると、俺もお前も同じこと考えてるから。だから安心してお前らは「売れちゃった」俺の
あとをついてこいっていう?
空虹桜>うん。それはもう「売れちゃった」人間にしか言えないことなのよ。どんなにライムスキルが
あっても絶妙なトラックを組み合わせても、売れた人間がすべてなわけじゃん。売れてないヤツに
ついてけないもん。
U・B >つまり、ついてくならケツイメイシかRIP SLYMEかKICK THE CAN CRUEか。
空虹桜>迷わず殴るよ。
U・B >なにを言ったところでトータルセールスじゃ勝てんだろ。うん。
空虹桜>いや、まぁそうだけど・・・
U・B >とりあえず、風が吹いてるときだからこそできる曲だってのは理解しました。そうじゃ
なかったら外野から言われるもんな
空虹桜>デカいこと言うなら売れてから言え。
U・B >リスナ側のクセして俺とかマグマで書くな。それ。
空虹桜>うん。たぶんきっとね、向こうもうしばらくは日本のHipHopシーンにおいてこんなに王様風吹かせら
れるユニットって出てこないと思うの。
U・B >どんなトータルセールス稼げても、瞬間最大風速は勝てないだろうな。
空虹桜>うん。その瞬間最大風速こそがHipHopだと思うし、それを感じることができるこのアルバム持たずに、まして
や聴かずにHipHop語るのは間違いだと思う。
U・B >なわけで続きます。(※12)
※1 ブクオフでも100円台かと。ショップによってはもっと安価で買えると思われ。目印は緑のCDケース。
※2 EAST END × YURI:HipHopユニット「EAST END」が元々友達だった東京パフォーマンスドールの「YURI(市井由理)」と遊び半分で作ったユニット。EAST END:1990年結成。GAKU-MC・ROCK-Tee・YOGGYの3人組HipHopユニット。1MC2DJってのもわりに珍しいスタイル。なお、リンク先はEAST ENDのオフィシャル。
※3 ブギーバック:まぁクロスフェーダをずっと読んでる人で知らない人はいないと思うけど、スチャダラパーfeaturing小沢健二の名曲「今夜はブギーバック」のこと。クロスフェーダの中でもっともアクセス数の多いここで体系的に語ってます。
※4 DA.YO.NE:EAST END × YURIのデビュウ曲。ブレイクのきっかけは北海道でのパワープレイ。U・Bと同世代の大半はこの曲からHipHopに入った。本アルバムの12曲目に納められてるので、後編で語ります。ちなみに、この曲は日本全国ローカルヴァージョンが作成されており、北海道ヴァージョンの「DA・BE・SA」を唄ったのは「ミスター」こと鈴井貴之。
※5 日本のRapはいとうせいこうがスタートではなく、吉幾三の「おら東京さ行くだ」だというのが空虹さんの持論。ネット上にはこの説を支持する人がわりといるようだが、空虹さんに影響されてるわけではないと思われ(笑)ちなみにちなみに、空虹さんは、この説を中学ぐらいから主張してらっしゃいました。って書けって言われました(笑)
※6 各大部は歌詞より引用。
※7 アタシがこゆこと言ってるときは半分冗談ですのであまり真に受けないように。「社会が成熟する」とか「社会が豊かになる」とか本気で言ってる人は信用しないでね(by 空虹)
※8 TPD:東京パフォーマンスドールの略。おニャンコ倶楽部とモーニング娘。との間にあるミッシングリンクを補完するユニット。さらに度湯ユニットか知りたい人には「GROOVIN'」の歌詞を読もう(笑)同様のモノにOPD(大阪パフォーマンスドール)もあり。
※9 気が向かなかったので説明の注釈がないってことを説明するための注釈(笑)
※10 インストゥルメンタル:唄無しRap無しの曲モノのこと。
※11 EAST END、つまり極東。欧米を中心に世界を見た場合、日本のこと。HipHopがアメリカ初のカルチャであることを意識した上でこの名前を考えると、とても意味深。
※12 空虹桜39行。U・B36行で俺の勝ち。ちなみに、今回は意識的にHipHopとかdisとか英語表記してますが、読みにくかったら止めます。いつもはそんな意識してません(ヲイ)