U・B >さて、斉藤州一郎が復帰した(※1)アナログフィッシュ(※2)5thアルバム「Life Goes On」(Amazon/iTS)を語る後編は6曲目
の「曖昧なハートビート」からです。
空虹桜>珍しく出だしから曲振り。
U・B >時間が勿体ないですからね。
空虹桜>5曲目の「平行」がクライマックスみたいな曲だったのに比べて、穏やかな曲というか。
U・B >そッスねぇ。でも、モティーフは同じというか、あっちが、この世界のなんとも言えないすれ違いっぷりを唄ってるのに対し
て、この曲は反対というか、自分に引きつけて、「曖昧」に包含できる程度にしか乱れない心拍数を繰り返す日々
を唄ってるわけじゃないですか。
空虹桜>「心拍数を繰り返す日々」っていいね。タイトルのストックにもらってく置くわ。(※3)
U・B >なにを藪から棒に。
空虹桜>言っとかないと、あとでパクリとか言われるとめんどくさいからさ。
U・B >そりゃそうでしょうけど、なんつーか、このタイミング?的なさ。
空虹桜>ほら、時間が勿体ないんでしょ?
U・B >そう切り返してきますか・・・えーと、最終的には、この曲の愛してるぜをどういう意味に取るかだと思うんです。
空虹桜>前の分に寄り添って読むとこの日常の肯定だし、恣意的に文脈を取ると、この日常からの脱出の肯定になるのかな?
U・B >下岡曲(※4)なんで、むしろ、この日常の肯定に見せかけた皮肉かなぁっていう。
空虹桜>ああ、そうだね。
U・B >俺にしろ空虹さんにしろ、いつの間にか斜に構える性分になっちゃってるじゃないですか。
空虹桜>アタシは意図的になったんだけどね。
U・B >どちらにせよさ、そゆ人間にとって、実はこの21世紀ってスゴい生きにくいんですよ。
空虹桜>え〜、違うよ。それだと太宰とか自殺しないよ。読んだことないけど。それは単に自己高揚のカッコつけに過ぎないって。(※5)
U・B >まさかの全否定。
空虹桜>農耕民族とか狩猟民族とか、くだらないこと言いたがる頭いい人ぶった受け売り馬鹿が蔓延ってるけど、分類学的にサル目は社会性動物
なんだから、その社会性から逸脱しようとするのはDNA的にNGなんじゃないの?って程度の話で、じゃあ、社会
性とはどのようなモノなのか?ってのは社会学の領域だけど、今はそんなことを話す時間では無いので、次の曲7曲目「kiss」
U・B >なんつー強引な。
空虹桜>こちらは佐々木曲(※6)で、夜中に36度もあったら死んじゃうよね。っていう。つか、エアコン点けろよ!っていう。
U・B >そこツッコみますか。
空虹桜>ツッコまざるを得ない。
U・B >個人的な話をすると、体温が出てくる曲がわりと好きで、この曲もわりと好きなんですけども。
空虹桜>ああ、人肌が恋しいんだ。
U・B >残念な人呼ばわりは止めてください。いくら事実でも。
空虹桜>否定はしないんだ。
U・B >否定できたらこんなとこで喋ってませんよ。って、わりとお約束な件は置いておいて、夜に気づかれぬように息を殺
し 君の手を握った夜明け(※7)ってフレーズの見事さに尽きる曲だと思うんです。
空虹桜>ちゃんとタイトル通り口づけしてるにもかかわらず、手を握った方を取ると。
U・B >「夜に気づかれない」っていいと思うんですよ。口づけしてる方は直接表現だけど、こっちは比喩表現じゃないですか。
空虹桜>おおっ。賢い人みたいだ。
U・B >だって、比喩の方がエロいじゃないですか!
空虹桜>それはまぁね。古い日本文学が無駄にエロいのはそこだしね。とはいえ、そのエロ話をすると時間が無くなるんで8曲目
「Tomorrow」で、前の曲から引っ張ってくるとヤリ逃げした後失踪と。
U・B >ああ、失敬な解釈を・・・
空虹桜>自然な解釈だと思うんだけどなぁ。
U・B >作詞が違うし。
空虹桜>曲順はバンドの意図でしょ?
U・B >そりゃそうですけど、そりゃそうですけど、そりゃそうですけど・・・
空虹桜>あまりこの曲は良いとは思ってなくて、完全に逃げちゃってる曲なんだよなぁっていう。もうちょっと下岡晃という人は他人事
の線をキープしつつ戦う人だと思ってるので、曲調やタイトルに反して、あんまりだなぁっていう。
U・B >まさかの空虹さんから下岡晃評。
空虹桜>どんだけアタシはアンタに曲聴かされたと思ってんですか?
U・B >まったくで。
空虹桜>そんなわけで9曲目がポエトリリーディング感すらある「Ready Steady Go」
U・B >たしかに佐々木健太郎という人にはこの曲ピッタリではあるんですよ。
空虹桜>パブリックイメージの具体化っていうか。
U・B >しかも路地裏で拾ったこのトーキングブルースで この平たい地平に金字塔を打ち立てるんだとか言
っちゃいますからね。(※8)
空虹桜>明確な決意というか宣言だよね。
U・B >わかって聴くと、このあとに出るのが「失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい」ってミニアルバムなので、まさしくなんですよ。
空虹桜>具体的に言うと?っていうのは、もしかして次回?(※9)
U・B >ええ。次のアナログは。
空虹桜>じゃあ、置いておいて最後。「ハローグッバイ」
U・B >「Ready Steady Go」も佐々木健太郎だったけど、でもやっぱり、俺的にはこの曲の佐々木健太郎感が佐々木健太郎な
んだよなぁっていう。
空虹桜>音階昇順そのまま。
U・B >もちろんそれもあるんですけど、ハローグッバイ 怯えるハートの勇気が指差す方向へ 僕らを勇気付けた
歌口ずさんでゆこう(※10)っていうのがさ、この歌がその「僕らを勇気付けた歌」かどうかはともかく、後ろを見ない人感全開な
ところが、佐々木健太郎だよなぁと。
空虹桜>推進力というか。
U・B >バンド内で上手い具合にバランスが取れていて、下岡のプロテストな斜め感を、健太郎の直線感が支えていて、トータルでは州一郎のコ
ーラスが調和してるっていう。
空虹桜>なんか今の〆の言葉っぽいから、今回はここで終わりましょうか。(※11)
※1 斉藤州一郎:アナログフィッシュのドラム。2008年3月10日に脱退し、2009年10月10日復帰。
※2 アナログフィッシュ:1999年に結成の下北系ギターロックバンド。長野県下伊那郡喬木村出身の下岡晃(Gt&Vo)と佐々木健太郎(Ba&Vo)に斉藤州一郎(Dr)を加えた3ピースバンド。
※3 タイトルのストック:空虹さんは物書きなので、作品のタイトル案をいろいろキープしているらしい。
※4 下岡曲:アナログフィッシュのギター、下岡晃が作詞作曲した楽曲のこと。
※5 太宰とか自殺しない:そうは言ったけど、実は「走れメロス」とか国語の教科書に出てたから読んだわ。by 空虹
※6 佐々木曲:アナログフィッシュのベース、佐々木健太郎が作詞作曲した楽曲のこと。
※7 拡大部は歌詞より引用。
※8 拡大部は歌詞より引用。
※9 もしかして次回:具体的には11月のクロスフェーダに見せかけて、実は来年だったり・・・
※10 拡大部は歌詞より引用。
※11 空虹33行。U・B38行で、もちろん、俺の負け。ちなみに、2014/10/8に新譜「最近のぼくら」リリース。