第758回 ミスターシティポップ(後編)

空虹桜>今じゃすっかりヴォーカリストなかせきさいだぁ※1)の4thアルバム「ミスターシティポップ」(CD / MP3 / iTS)を語る後編です。
U・B  >6曲目は「夏の月面歩行」で、このタイトルは秀逸ッスよねぇ。
空虹桜>ほう。秀逸と申したか?
U・B  >なんですか?その無駄な時代劇口調は。
空虹桜>「時代がかった物言い」ぐらいにしておいてください。それはともかく、Good Old POPS!な佇まいな曲だなぁと。
U・B  >そうッスね。完全にポップスッスね。あぁ夏が過ぎていくよ ムーンウォークで※2)とかわけわかんない歌詞ですけど。
空虹桜>まぁでも、いかにもかせき感溢れる歌詞でしょ?
U・B  >たしかに。
空虹桜>やっぱり、かせきさいだぁの曲は、晩夏ぐらいを唄ってる感じが似合ってるなぁって、改めてこの曲聴いて思いました。
U・B  >もしかしたら、「晩夏」って概念自体が過去の遺物なのかもしれないですしね。さて、7曲目が「雨のサブウェイ」は、もう、サビの「雨の」
       3音がグッと来ます。
空虹桜>この曲はラップパートも入ってる、パブリックイメージのかせきさいだぁな感じ。
U・B  >歌詞に乗り入れて地上に出る瞬間 僕らはもう一度Kissをしよう※3)って歌詞があるじゃないですか。この地下
       鉄何線ですか?
空虹桜>ええ?アタシに訊く?それ?鉄じゃないよ。(※4
U・B  >「乗り入れ」ってからには、私鉄かJRと接続している必要があるので、札幌市営地下鉄南北線じゃないわけですよ。(※5
空虹桜>うん。さすがにそれはアタシでもわかる。っていうか、その話長い?
U・B  >いや、最初、なんで地下鉄のクセに「雨」で「まばゆい光」なんだかよくわかんなかったんですけど、たしかに、地下鉄が地上に出てくる時の世界
       が一変する感じってのは、インパクト強いよなぁと。
空虹桜>心理的に明るくなるってのはポジティヴな急変なんだよね。だから、トーンのわりに明るいというか、先に続く曲になってる。
U・B  >歌詞もそこを意識してる感じですわな。さて、8曲目が名曲「冬へと走りだそう」のセルフカヴァ。
空虹桜>ちょうどさ、先週ぐらいからがこの曲似合う季節になったなぁっていう。(※6
U・B  >たしかに。そゆ意味では、なんか東京って季節を先取りしすぎて、わけわかんないなぁって強く感じるんですよ。
空虹桜>うん。それはまた別の機会に聞くよ。
U・B  >さよですか。
空虹桜>とりあえず、「さぁアスピリン片手のジェットマシーン×3」そんな気分なのです※7
U・B  >まぁ、そこですわな。あと、何気に今さらですけど、この曲、作曲がワタナベイビーだったりするんですよ。(※8
空虹桜>ホフもLB界隈(※9)近しい人だもんね。
U・B  >ええ。そこでさらにハグトーンズ(※10)でカヴァしたらさらにBPMが上がってる感じで、今にアップデートされてるんだけど、骨格が揺らが
       ないなぁっていう。
空虹桜>イントロ聴いたら自然と反応しちゃう感じね。あと、「そんな気分なのです」ってフレーズのマジカルさね。
U・B  >なにも言ってないのに、説得力というか、納得力があるという。
空虹桜どんなだ!ってツッコんでいいことに気づかないというか。
U・B  >セルフカヴァが続いて、9曲目が、最近Hicksville(※11)でもカヴァした「くちづけキボンヌ
空虹桜>アイドルソング(※12)を、作者とはいえ40過ぎたオジサンが唄うというね。
U・B  >じゃあ、真城さんならなにを唄っても許されるのか?っていうね。
空虹桜真城さん馬鹿にするな
U・B  >してないですよ。してたらマシロックとか行かないですよ。
空虹桜>かせ君は昔インタヴュで、「キボンヌ」ってフレーズの普遍性みたいなことを語ってたんだけど、実はこの曲は「キュンキュン」ってフレ
       ーズが未だに死んでないっていう、まさかの証左なんだよね。
U・B  >ああ、たしかに。
空虹桜>そのくせ、それこそアキバとかで不意にこの曲かかっても、永遠にon and on は無く、この世の夢は儚く 印象派の
       絵の具が、どこか朧気なように※13)なんてラップ聴いたら、かせ君だって絶対わかると思うんだよね。
U・B  >「印象派の絵の具」ってフレーズはなかなか出てこないですわな。今の日本のポップシーンで。
空虹桜>そゆところでザラッとするのって大事なんだけどね。
U・B  >違和感の残し方ですわな。さて、10曲目が「フリーダム フリーダム!」で、ポップっていうか、ロック
空虹桜>イントロのギターとか、やっぱり木暮晋也!※14)って感じだもんね。
U・B  >弾いてるのは木暮さんじゃないですけどね。やっぱりこの曲はまだ見ぬフリーダム、フリーダムへ 魅惑のフリーダム
       フリーダムへ 僕らはフリーダム フリーダムへ 終わらぬ週末を 楽しもうぜ Weekend
       Freedom!※15)の気持ちよさがすべてかと。
空虹桜>「フリーダムへ」の「へ」を意図的に「YEAH」って唄ってるところがね。もういっそヤラしいよね
U・B  >スキップカウズの曲(※16)にもあるけど、「YEAH」ってフレーズを思いついたヤツは相当ですよ
空虹桜>曲の突き抜けてる感と合わさって、余計にね。
U・B  >いい曲ですよ。ホント。
空虹桜>たぶん、かせ君が死んだ後とかに、「レアグルーヴだ!」とか言って、DJが掘り返すんだろうね。
U・B  >でも、掘り当てられるだけマシだとも。さて、ラスト11曲目は「アウトロ」ってことで、1曲目の「Mr.CITY POP」に呼応してるようなインスト曲。
空虹桜>アルバム全体として、間違いなくいいアルバムだと思うんだよね。紛れもなくポップで。
U・B  >そこは間違いない。
空虹桜>あと、今のかせきさいだぁを聴いてから、古いかせきさいだぁとを聴くと、唄おうとしているせいか、声のトーンというかキィが、ちょっと
       のが高いのね。そこの頑張ってるというか、ヴォーカリストっぷりは、今回みたいにセルフカヴァした曲を聴き比べるとよくわかるんだろう
       なぁと。(※17


※1 かせきさいだぁ:元かせきさいだぁ≡。元TONEPAYS。ハグトンでラッパーで、釣りの人。
※2 拡大部は歌詞より引用。
※3 拡大部は歌詞より引用。
※4 鉄:鉄道ヲタクの略。
※5 札幌市営地下鉄南北線:札幌市内を走る地下鉄。平岸駅から真駒内駅間の4.5kmは、地上高架となっていて、世界で唯一、雪を防ぐためにアルミ合金製のシェルターで覆われている。
※6 先週ぐらい:本稿がWebで公開されたのは2014/12/14のことです。
※7 拡大部は歌詞より引用。
※8 ワタナベイビー:ホフディランのギターヴォーカル、渡辺慎のこと。ベイビーもフリーダムな人だからねぇ。
※9 ホフ:ギターヴォーカル渡辺慎と、ヴォーカル・キーボードの小宮山雄飛からなる日本の2人組音楽バンド、ホフディランの愛称。 LB界隈:スチャダラパーを中心とした日本のラップグループ・クラン、リトル・バード・ネイション(Little Bird Nation)のこと。Wikipedia見たらホフもLBに入っていた。
※10 ハグトーンズ:かせきさいだぁのバックバンド。元ポメラニアンズ。
※11 Hicksville:ロッテンハッツのメンバーのうち3人が同バンド解散後の1994年に結成したロックバンド。Vo.真城めぐみ、Gt.中森泰弘、木暮晋也。
※12 アイドルソング:元々はでんぱ組.incに提供された曲。
※13 拡大部は歌詞より引用。
※14 木暮晋也:リーゼントの兄貴。かせきさいだぁとはTOTEM ROCKとして一緒に活動している。
※15 拡大部は歌詞より引用。
※16 スキップカウズの曲:アルバムトラストオーバーサーティ収録の「OH〜YEAH!」のこと。
※17 空虹桜31行。U・B31行で、の勝ち。来月はスチャダラパーの新譜が出るので、次はそっちをやるカモ。


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