第781回　ゆ・と・り　死んじゃダメだよ

空虹桜＞なんかさ、三十過ぎたせいか、リアルにというか、切実に思うんだよね。
Ｕ・Ｂ　 ＞久々に唐突な入りですが、きっかけは、先々週ウチら二人で行った「人間交差点」に遡りますよと。（※１）
空虹桜＞去年はさ、MAKI THE MAGICが死んで（※２）、今年はDEV LARGEだからね。（※３）
Ｕ・Ｂ　 ＞今時のキッズどころか、俺でも注釈書くの大変な。
空虹桜＞Ｕ・Ｂできる子。
Ｕ・Ｂ　 ＞おもいっきし、おふざけノリで言われましても。
空虹桜＞ともかくさ、「彼方からの手紙」なわけだよ。（※４）
Ｕ・Ｂ　 ＞ああ、あいつも来てればな（※５）って、俺に言わせますか？そのフレーズ。
空虹桜＞言える子でしょ？
Ｕ・Ｂ　 ＞ええ。まぁ、言える子か言えない子かでいえば、言える子ですけども、そういう問題じゃなくね？
空虹桜＞どういう問題かっていうと、やっぱり、ああいうハレの場にこそ誰かの不在を感じるし、そこにいるべき人がいないのは、しん
　　　 　　 どいんだよね。
Ｕ・Ｂ　 ＞去年の怒髪武道館に吉村さんがいない。みたいなね。（※６）
空虹桜＞その辺は存じ上げません。
Ｕ・Ｂ　 ＞存じろ！
空虹桜＞そのツッコミ新しいなぁ・・・
Ｕ・Ｂ　 ＞なんなんッスかね？あの不在感という名の存在感。
空虹桜＞なんなんだろうね？しいて言うなら、想いには質量があるんだよね。
Ｕ・Ｂ　 ＞基礎知識があるとはいえ、俺もどっちかったらヒップホップの畑外の人じゃないですか。
空虹桜＞結構な本数見てるけどね。
Ｕ・Ｂ　 ＞まぁね。でも、それでも、スゴい哀悼というか、なんでいないんだよ！みたいな、言葉にならない叫びが溢れてたじゃないで
　　　 　　 すか。あの空間。
空虹桜＞言うなればね。ひとつには、ヒップホップってジャンルが、仲間意識の上に成り立ってるジャンルだからだよね。
Ｕ・Ｂ　 ＞ああ、たしかにね。文脈がまだ拡散してないですよね。
空虹桜＞この業界狭いですからね的なね。
Ｕ・Ｂ　 ＞それが、演者さんだけじゃなく、客も理解している。
空虹桜＞とくにあの場はね。客の年齢層的にも、自分たちが日本のヒップホップを作ってきた自覚がある人たちだから。
Ｕ・Ｂ　 ＞ちょうど金持ってる年代になり。
空虹桜＞つまり逆に、あっさり死んでしまう年代でもある。
Ｕ・Ｂ　 ＞この国は働き盛りが死に盛りですからね。（※７）
空虹桜＞残念ながらね。
Ｕ・Ｂ　 ＞そう、それで、ちょうど大塚幸代まで亡くなってて（※８）、余計になんか、なんで死んじゃうかなぁっていう。
空虹桜＞それはよくわかんないんだけど、人間いつかは死ぬわけじゃないにもかかわらず、なんでこんなにでも、死んじゃダメだよ
　　　 　　 みたいなこと思っちゃうんだろうね。
Ｕ・Ｂ　 ＞愛川欽也が亡くなったじゃないですか。（※９）
空虹桜＞話変わった？
Ｕ・Ｂ　 ＞続いてます。あの人さ、「アド街」千回やりきって亡くなったわけじゃないですか。（※１０）
空虹桜＞そだねぇ。
Ｕ・Ｂ　 ＞たぶん、そこまでが意地で、変な言い方だけど、そこまでやり抜いたから死んだんだと思うんです。
空虹桜＞はいはい。言わんとしてることはわかる。
Ｕ・Ｂ　 ＞だから、その意味では大往生じゃないですか。でも、ケロンパの会見の憔悴っぷり（※１１）ったらハンパなくって、なんかもう混乱ですよ。どう死ね
　　　 　　 ばいんッスかね？
空虹桜＞わけわかんないよね。
Ｕ・Ｂ　 ＞とりあえず、どんな状況に陥っても、自殺はいかんなぁって、最近思い直しはじめましたけどもさ。
空虹桜＞それにしたって、醜く生き延びるのか？っていう、変な美意識との狭間が待ち受けてるんだけどね。（※１２）

※１ 人間交差点：RHYMESTERが開催した野外フェス。レポ書いてあります。
※２ MAKI THE MAGIC：キエるマキュウのMC。2013/7/14、脳内出血のため逝去。享年46歳。3人目の息子はMAKI THE MAGIC逝去後の2013/10/17に生まれた。そして、その日はMAKI THE MAGIC追悼イベント「MAGIC FOREVER」が開催されていた。
※３ DEV LARGE：1990年代にBUDDHA BRANDのMC、リーダーとして活動。2005年にアーティスト名をD.Lに改名したラッパー。トラックメイカー。2015/5/4急逝。
※４ 彼方からの手紙：スチャダラパーの3rdアルバム「WILD FANCY ALLIANCE」収録の名曲。元ネタはもちろん、「カナダからの手紙」
※５ 拡大部は歌詞より引用。
※６ 怒髪武道館に吉村さんがいない：R&Eバンド怒髪天初の武道館ライヴに、盟友bloodthirsty butchersの吉村秀樹がいなかったという話。吉村秀樹は前年の2013/5/27、急性心不全のため逝去。
※７ 働き盛りが死に盛り：元ネタは日経ビジネスオンラインのコラム。有料コンテンツなので、見出しぐらいしか知らない。
※８ 大塚幸代：元「Quick Japan」黄金期の編集者でフリーライター。デイリーポータルＺの「青くする実験」や「ダイイン」、「佐藤修悦」で有名だが、なによりフリッパーズ・ギターのファンジン「FAKE」を作っていて、小沢健二に会うためだけにNYへ行ったことで有名。2015/4/3のDPZ編集部ブログにて逝去が報告された。
※９ 愛川欽也：a.k.a キンキン。あなたの街の宣伝本部長。2015/4/15、肺がんのため死去。
※１０ アド街：テレビ東京の番組「出没！アド街ック天国」の略。
※１１ ケロンパ：愛川欽也の妻、うつみ宮土理の愛称。
※１２ 空虹２３行。Ｕ・Ｂ２２行で俺の勝ち。でまぁ、空虹さん曰く「望むと望まざると、生まれてしまった以上は、簡単に死んじゃダメなんだよね」