空虹桜>2017年はすっかり小沢健二のバックバンドの人(※1)と化していたHALCAが所属していたHALCALI(※2)
の2枚組アルバム「TOKYO GROOVE」(Amazon / iTS)を語る後編です。
U・B>5曲目「tears of love」は大好きなんだけど、一度も見る機会にすら恵まれていないNathalie
Wiseプロデュース!(※3)
空虹桜>最初の「あなたの」の言い回しだけで、これBIKKE作詞だ!(※4)ってわかる強烈な作家性。
U・B>ヒロシ君(※5)作曲じゃないとはいえね。しかも、珍しくBIKKE自身が作曲にクレジットされている。
空虹桜>BIKKE作曲できたんだ!っていう。
U・B>むべもないサプライズね。あと、個人的にはこの路線の到達系が、彼の名曲「Innocent Love」(※6)だと思っているので、いい
曲だとは思うけども、焼き増し感は拭いきれない。
空虹桜>だいぶ上から目線だなぁ。この曲はハッキリ解放の曲で、無意識の束縛に対する許容なわけじゃない。
U・B>いきなりシリアスな解説。あなたの強い愛に触れて 私は そうよ 泣いたの 涙を こらえる
事だけが 愛だと 信じてたのに(※7)ってあたりですね。
空虹桜>泣くのを肯定するって、簡単なようで存外難しい。
U・B>単純な言葉で肯定されても、ちょっと距離がある。
空虹桜>「わかられたくない感」がどうしてもわだかまるんだよね。
U・B>めんどくさい!
空虹桜>アンタが言うな。
U・B>まぁね。さて、いつまでもこの曲喋ってても仕方が無いので、次、6曲目はNONA REEVES感全開(※8)の「ZIG ZAG
SATURDAY NIGHT」
空虹桜>目黒通り出さなくてもお洒落(※9)っていう。
U・B>もう、この頃には東京住んでたんですけど、ヤだ。東京お洒落思いましたもん。
空虹桜>お洒落に憧れて、お洒落な音楽を身につけた人と、ナチュラルボーンでお洒落な人たちのコラボだからね。
U・B>いかにもヒップホップらしい。
空虹桜>そう、それこそANARCHYとかKOHH君(※10)とかのヒップホップらしいヒップホップが一方であって、でも、日本のクラシッ
クなヒップホップって、ギドラ(※11)とか渋谷生まれの渋谷育ちだったりするわけじゃない。
U・B>一側面だけでなにかを語るのは、必ず欠落が生じますからね。
空虹桜>ビースティ(※12)とか、パンク出だけど、都会感がずっと滲んでるヒップホップだったりするわけだし、そもそも都会じゃ
なきゃスラムなんて生じないっていうね。
U・B>まぁね。って、なんの話だかだいぶわかんないですけど、7曲目の「ENDLESS NIGHT」はいよいよBOSE登場(※13)
空虹桜>しかも、トラックはRAM RIDER(※14)っていう珍しい組み合わせ。
U・B>あっ、そういえばたしかに。珍しい。
空虹桜>エレポップっていうかなトラックでラップするボーちゃん(※15)って、結構珍しい気がするんだよね。
U・B>結構いろいろ客演してらっしゃいますからアレですけど、たとえば、電気グルーヴ×スチャダラパー(※16)なんて、エレポップ
言うにはドープだけど、近しいんじゃないですかねぇ。
空虹桜>どーだろ?ともかくまぁ、結局南極 運動不足(※17)が出てきた時点で笑っちゃうんだけどね。
U・B>わかるけど、笑っちゃ駄目。っていうか、改めて聴くとラップ巧いですよね、BOSEって。
空虹桜>改めたなぁ。
U・B>ちゃんと聞き取りやすい言葉でライムしつつ、しっかり擽るところは擽るじゃないですか。
空虹桜>日本語ラップの基本だしねぇ。
U・B>メロディと合ってるのに、メロディと聞き分けできるって、結構重要なスキルだと思っていて、今売れてる音楽って、ヒップホップ
に限らず、結構なに言ってるのかわかんないんですよ。
空虹桜>脳味噌老化してるからわかんないんじゃないの?
U・B>いや、それもあるけど、聞き流されるだけなら、人間の声である必要ないじゃないですか。結局、初音ミク(※18)にしろ、あ
の違和感こそが流行った主因だというのが俺の分析ですし。
空虹桜>とりあえず、一人の夜に悶々とすると長いよね!ってところで、Disc1最後は「HALCALI TOKYO
GROOVE TWO TURNTABLE MIX」
U・B>10分越えのリミックス。
空虹桜>なんだかんだ言って、こゆトラック聴くと、一番ヒップホップ聴いてるなぁって感じしない?
U・B>ちょっと質の悪い声ネタのループとかね。
空虹桜>DJがどれだけ性格悪いかで、いいミックスになるかどうかが決まる的な。
U・B>ヒデェ言い様。ちなみに、リミックスはピストン西沢(※19)
空虹桜>だけど、O.T.F(※20)のトラックつないでるから、総決算感がある。
U・B>たしかに。幼年期の終わり(※21)というか。
空虹桜>それはそれでどうかと思うけど、ともかく、ある種の終わりめいたかのように、Disc2はカヴァ曲だけだったりするっていうね。
(※22)
※1 小沢健二:もうすぐ50になろうというのに、渋谷系の王子様。2016年から、HALCAが小沢健二のバックバンドにいるので、ちょいちょいこの手の注釈を書いている気がする。
※2 HALCALI:「HALCA」と「YUCALI」を合わせたユニット名でお馴染みの2人組ヒップホップユニット。2012年頃に所属事務所やレコード会社と契約をすべて終了した。
※3 Nathalie Wise:TOKYO No.1 SOUL SETのBIKKEとアンダーカレントの斉藤哲也が2000年に結成したバンドで、高野寛も参加している。
※4 BIKKE:※2記載の通り、TOKYO No.1 SOUL SETのヴォーカル&作詞の人。
※5 ヒロシ君:加藤紀子の旦那こと、TOKYO No.1 SOUL SETのDJ。
※6 Innocent Love:彼の小泉今日子がカヴァしたことで有名な名曲。
※7 拡大部は歌詞より引用。
※8 NONA REEVES:名前の由来がゴータマ・シッダールタなことで有名な、マイケル・ジャクソンマニアの西寺郷太がフロントマンなポップロックバンド。
※9 目黒通り出さなくてもお洒落:曲中に「@目黒通り お別れ ジャスなう。」という歌詞がある。
※10 ANARCHY:本名北岡健太なタトゥー塗れなラッパー。街であったらチビるぐらいに怖いけど、MC聞いてると超いいヤツ。 KOHH:本名千葉雄喜なラッパー。宇多田ヒカルのアルバム『Fantome』の「忘却」でフィーチャされて有名に。こっちも街であったら(略)
※11 ギドラ:日本のヒップホップグループ、キングギドラ(KGDR)の略称。
※12 ビースティ:アメリカのヒップヒップグループ、ビースティ・ボーイズの略称。
※13 BOSE:空虹さんが大好きな日本のヒップホップグループ、スチャダラパーのメインMC。
※14 RAM RIDER:日本のミュージシャン、リミキサ、DJ。あるいは、インターネットラジオの人。
※15 ボーちゃん:BOSEの愛称。
※16 電気グルーヴ×スチャダラパー:彼の電気グルーヴとかのスチャダラパーの合体ユニット。それが「電気グルーヴ×スチャダラパー」だ!
※17 拡大部は歌詞より引用。なお、元ネタはスチャダラパーの「南極物語」(Amazon / iTS)
※18 初音ミク:クリプトン・フューチャー・メディアから発売されている音声合成・デスクトップミュージック(DTM)用のヴォーカル音源、およびそのキャラクタ。結局、要は売り方という話の象徴みたいなキャラクタ。しっかし、初音ミクが10年以上現役で活躍するとは思わんかったなぁ・・・
※19 ピストン西沢:元々は「ダンス☆マン&ザ・バンド☆マン」のリーダだったDJ。本名、西澤健。
※20 O.T.F:RIP SLYMEのRYO-ZとDJ FUMIYAによるユニット。「オシャレ・トラック・ファクトリー」の頭文字を取っている。
※21 幼年期の終わり:アーサー・C・クラーク御大の長編小説だけど、U・Bは読んだことがない・・・(ダメじゃん)
※22 空虹桜27行。U・B28行で俺の負け。珍しく歌詞の引用がすくない回となりました。