第923回 ビー・マイ・ケトル(後編)

U・B>間が開いちゃいましたけど、KETTLES※1)の1stアルバム「ビー・マイ・ケトル」(CD / MP3 / iTS)を語る後
    半です。
空虹桜>8曲目は「パンクミュージック」ってタイトルなのに、何故か曲自体はラップで、featuring 呂布(ex.ズ
    ットズレテルズ)※2
U・B>呂布と言えば、ワタクシ、当初は呂布カルマ(※3)とズットズレテルズの呂布が同一人物だと思っておりました
空虹桜>ややこしいよね。同じラッパーだし。全然キャラ違うけど。
U・B>フリースタイルダンジョン(※4)出てきて、ようやく全然違う人だと理解できました。それはともかく、この曲のどこがパンク
    って、まさかラップするとは!ってのがパンク。
空虹桜>その手の論法がわりと多用されるのがロック評論だよね。
U・B>だいたい、どんな適当なことでも「ロックだ」とか「パンクだ」とか言っとけば成立しますからね。
空虹桜>雑というかユルいというか。
U・B>所詮後付けで定義してるわけだから、しゃーないんッスよ。論旨にゆとりというか歪みがあること
    。にもかかわらず、後付けの定義に対する原理主義者が出てくるから混乱を生じる。
空虹桜>それはたしかにそうだよね。そもそも、人間の行動の大半は理論より実践があるし、だいたい理論先なのは流行ら
    ないというか、カッコいいんだけど尻つぼむ
U・Bなんとなくではじまってるからカッコいいっていうのが、わりと大事なんですよね。なので、この曲にパンク
    の名を冠するのは、それだけでパンクでカッコいい
空虹桜>言わんとしてることは筋が通ってるようで、だいぶ無茶苦茶なんだけど、あまりこれ以上イジっても面白くならなさそうだから、
    次、9曲目が「傘忘れた
U・B>この中身の無いダラッとした感じが、KETTLESいいなぁっていう。
空虹桜>最近にはじまったことじゃないのかも知れないけど、中身の無さみたいのが評価されない気がするんだよね。
U・B>たぶん、そこは空虹さんと立場が違くて、あえて中身の無いことをやってるかどうかが理解できてな
    んじゃないかと思ってんッスよ。たとえば、ずっと言ってるけど、糞みたいなマズい酒呑んでキャッキャやるのと、旨い酒呑ん
    でスゲェグダグダになるのって、中身の無さで行けば同じなんですよ。
空虹桜>そもそもアルコールを摂取するのは酔うことが目的なんだよね。
U・B>ええ。ならば糞みたいな酒呑んでるののが合理的なハズなんですよ。でも、その合理性には嫌悪感を抱くじゃな
    いですか!
空虹桜>はぁ。
U・B>いい顔して昼間から呑み潰れてるおいちゃんには抱かない嫌悪感の原因がなんなのかなぁってずっと考えてたんですけど、それは、
    酔うことが目的じゃないからなんですよ。
空虹桜>えっ?ごめん。全然理解できない。
U・B>酔うのは過程でしかなくて、そのあとに楽しくなるのが目的なわけじゃないですか。でも、いい顔してるおいちゃん
    たちって、酔うことにストイックなんですよ。
空虹桜>ごめん。ホントなに言ってるかよくわかんない。
U・B>この曲も音楽にして唄うことが目的なのだから、それが成立してればOKなんですよ。意味とか価値なんて、そんなの
    後付けで、どーでもいいんですよ。もしかしたら、気持ち良さみたいのすらどーでもいい
空虹桜>強引な論理だなぁ。あとやっぱ、いい顔してるおいちゃんは酔うことにストイックなんじゃなくて、気持ちいいだけだと
    思うよ
U・B>それは、お前の吐きが足りんからだ!
空虹桜>なんだそれ。いいや。次、10曲目「まだまだ
U・Bいい曲ですよね
空虹桜>結局、このバンドのキモは不条理感というか、置いてかれてる感だよね。そこにはシンパシィを感じる。
U・B>サビの大事なことはいつも たいした理由もなく どうでもいいことには しっかり理由
    がいる みんなの考えがまだまだ 理解できなくてぶつかってばかり※5)なんて、正しく今
    空虹さんが言ったとおりなんだけど、でも、この曲の真骨頂は「ララララ」言ってるコーラスなわけじゃな
    いですか
空虹桜>まぁね。
U・B>ある意味、そうやって誤魔化してるのかもしれないけど、シリアスなのにシリアスすぎない味付けって、2011
    年以降の極端な世界では難しい選択だと思うんです。
空虹桜>そうねぇ。アタシみたいな極論主義者よりも極論が蔓延ってるもんね。世の中。
U・B>極端が過ぎるじゃないですか。
空虹桜>とはいえ、11曲目「今日も過ぎてく」は1:55の短さ。
U・B>無間地獄の歌ですよ。
空虹桜>そうだけど、むしろ無力感だよね。ドラムが余計に強調してる。
U・B>このテンポでこゆこと唄うバンドって、それこそTheピーズ(※6)の直系みたいなもんだったりすると思うんですよ。何て冴
    えない毎日に(またまた夢を見て) やっと輝くものを見つけて(ときどき落ち込ん
    で) 空を見上げてる(騒いでみてもごまかせないまま)※7)って、完全にロックへの愛
    情表現なわけじゃないですか。
空虹桜>音楽があるから生きていける。
U・B>凄い気障な言い方をすると、表現者の人たちって、その表現方法が無かったら生きてけない人たちだと思う
    んです。俺は表現者じゃないから、表現者への信仰と言い換えてくれてもいいけど。
空虹桜>生きてけないかはわかんないけど、頭の中に物語が溢れて、吐き出さないと気持ち悪いってことはある。
U・B>で、12曲目の「手当たり次第」なんですよ。やったところですぐに飽きちゃって 次から次へ全
    部欲しくなる 手当たり次第!※8)って、叫べるのは本当に飽きちゃって手当たり次第やってる人なわけじゃな
    いですか。しかも、飽きることにいつまで経っても絶望しない
空虹桜>ああ。それはたしかにあるカモね。
U・B>飽きることに絶望してない人は信頼できるんですよ。もちろん、悟ってしまう方が賢いんだけど、俺はそこまで賢くない
    から、何度飽きても違うことを繰り返す
空虹桜>なんかカッコいいこと言った。最後、13曲目が「目が痛ぇ
U・B>アルバムとしては、アウトロというかエンドロールみたいな曲だと思うんだけど、これだってさ、要するに目を瞑
    れよ!って話じゃないですか。
空虹桜草の根もない 砂漠の真ん中 風が吹いて 砂まじり 目が痛ぇ 目が痛ぇ 涙が止ま
    らない※9)だもんね。
U・B>ええ。でも、そこで目を瞑らないのには理由があるというか、瞑れない衝動みたいなモノがあるわけですよ。もし
    くは、瞑るという選択肢が最初から抜け落ちてるわけじゃないですか。もうちょっと、巷間でこういう曲がち
    ゃんと流れて、最初から抜け落ちてるのは自分だけじゃないって知る機会が人間には必要だと信じてい
    て、だからホント、もうちょっとでいいから、KETTLESは届かなきゃいけない人たちに届けなきゃいけ
    ないバンドなんですよ。(※10


※1 KETTLES:2008年夏、結成。コイケヤスオ(Gt/Vo)とオカヤスシズエ(Dr/Vo)による男女2人組ロックンロールデュオ。
※2 呂布(ex.ズットズレテルズ):KANDYTOWN・BankRollのメンバ。OKAMOTO'Sの前身バンドとされるのが、ズットズレテルズで、メンバは芸能人の子どもばかり。
※3 呂布カルマ:名古屋で活動するラッパー。フリースタイルダンジョンの二代目モンスター。U・Bの発言と同様のことが、Wikipediaに記載あってビックリ。
※4 フリースタイルダンジョン:地上波で一番面白い音楽番組。司会進行・ナレーションを務めていたUZIが2018/1/15に大麻取締法違反で逮捕されたため、いろいろ大変なことになっている。
※5 拡大部は歌詞より引用。
※6 Theピーズ:日本のロックバンド。30周年で武道館をやった
※7 拡大部は歌詞より引用。
※8 拡大部は歌詞より引用。
※9 拡大部は歌詞より引用。
※10 空虹28行。U・B50行で、の大敗。次は順調に「Here!」を語ります。


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