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空虹桜> 2018年のアルバムってことは、もう2年前(※3)だ。ヤバイね。昨今、ホント時間があっという間に過ぎてくわ。
U・B> 我々、すでにアラフォーで老害年代(※4)ですからね。しかも、時々、自分が何歳かわからなくなるっていう。
空虹桜> ホントもう、いらん子だよね。アタシら。そんな中で1曲目は「Copy & Paste」で、まぁ、そりゃ日常はコピペだよね。
U・B> ええ。しかもさ、「おめでとう 君は今日も誰にもなれなかったね ありがとう 僕も今日も誰にもなれなかったよ」(※5)なんて、アカペラコーラス(※6)で唄われたら、別にアナログに肯定されたいわけじゃないのに、とてつもないある種の諦めに近い肯定感を抱く。
空虹桜> 何者でもないわたしだからこそ、コピペの日常しか過ごせないのだけれど、なんでもないようなことが幸せ(※7)であるなら、コピペこそが幸福なんだよね。
U・B> THE 虎舞竜引用する(※8)のはどうかと思いますけど、俺が思うプロテストソング(※9)って、やっぱりこういう曲なんじゃないかなぁっていう。このアルバムのタイトルが「静物」なのって、日常を切り取ってるからだし、世界が硬直しているからでもある。
空虹桜> それを祝うっていう、そこはかとない悪意ね。
U・B> 悪意と読み取るあたりが性格の悪さですよ。空虹さんの。
空虹桜> アンタの言い面がそゆ意味でしょ?2曲目が「With You (Get It On)」で、わりとラップっぽいAメロBメロ。
U・B> ポエトリリーディング(※10)でもOKな感じですけどね。これはもう、駄目な感じが大好きですよ。
空虹桜> アンタ好きそうだなぁと思った。もう関係としては破綻してるよ。
U・B> どんなに親しくたって、君と僕とは他人だって、川本真琴も唄ってたじゃないですか!(※11)
空虹桜> そこ来ますか。
U・B> その中で「なんて思いながら君を眺めてた柔らかそうな産毛が光ってた」(※12)って、もう、最高なんですよ。そう。不意に産毛とかで超テンション上がることがある。
空虹桜> 変態め。
U・B> 俺から言わせれば、もっと変態は世の中いっぱいいるし、なにより、変態じゃない奴は人間じゃねぇ。
空虹桜> 極論。次、3曲目「Sophisticated Love」で、山の無いメロディが続く中で、イントロでありサビのポップさがキャッチィ。
U・B> そですね。ちなみに、コーラスがKETTLESのオカヤスシズエ(※13)そして、発売当時からずっと言ってますけど、そのサビ「Sophisticated Girl Sophisticated Love Sophisticated Boy Sophisticated Lovers」(※14)が「So スケベガール So スケベラブ So スケベボーイ So スケベラブ」に聴こえて、これは知的でもなければプラトニックでもねぇ。ただの変態だ!っていう。
空虹桜> うん。酷い。
U・B> だって、「年をとったらとるだけ賢くなるなんて それは半分正しくてそれはほとんど間違ってる」(※15)って、実際、賢くならないし、SEXしなくてもやっぱり触れてはいたかったりするじゃないですか。テーブル挟むと距離が寂しいとかさ。
空虹桜> インポ?(※16)
U・B> うっせぇ。お前、いきなりドストライクに下衆なこと訊くな。
空虹桜> 振りでしょ?
U・B> ちげぇよ。あと、時々自分でもビックリするぐらい元気だぞ。
空虹桜> それこそ知らんわ。話がくだらないので次。4曲目が「Dig Me?」で、今までの穏やかな流れから一息ついて、ポップさが全面に来る。
U・B> 3曲下岡曲が続いてからの健太郎曲(※17)だけど、アナログのライヴ見てても思うのは、ヴォーカルが替わると空気入れ換えるみたいな感じがするんですよ。
空虹桜> ある意味煮詰まらない。
U・B> 煮詰まるのがいいのと悪いのがあって、アナログは煮詰めすぎるとちょっと重たいんですよ。だから、健太郎曲が入ると、次がまたおいしくなる。
空虹桜> チャンポン(※18)しすぎて呑み過ぎる的な。
U・B> チャンポンしてもしなくても、吐く時は吐きますけどね。
空虹桜> ねぇ。
U・B> とりあえず、健太郎曲なのに「正しくなりたいだけなら 少しだけ黙っていてほしい」(※19)って、切り方が珍しいなぁと。
空虹桜> このところとくにアタシは「ただしさ」へ中指立ててるけど、「ただしさ」って、そんな楽しいもんじゃないよね。
U・B> そもそも、「ただしさ」を崇めることが「ただしい」のか?っていう。
空虹桜> 偶像崇拝に近いよね。さて、5曲目が表題曲「Still Life」だけど、印象が薄い!
U・B> ドラムのリズム感に比べて、ずっと裏声というか、キー高めで唄ってるから、歌詞の印象が薄いんじゃないかと思うんですけど、この曲はなんと言っても「"愛している"なんて 言っちゃいけないと思っていたよ」(※20)と、何故思っているのか?ですね。「静物」というタイトルなのに。
空虹桜> 浮世な職業だもんね。
U・B> それはそれであるかもしれんけど、酔った勢いはアカンのですよ。やはり。「愛してる」は素面で言わんとアカンのですよ。
空虹桜> でもさ、素面で「愛してる」とか、ちょっとキモい感じもあるよ。フランス人じゃあるまいし。
U・B> ああ。そッスね。ただ「壁にかかっている 静物画のように この気持ちを 閉じ込められたら」(※21)を踏まえたいんだけど、感情を感情のままに流れるんじゃなくて、ちゃんと「名前を付けて保存」しとくのって、大事だと思うんです。
空虹桜> アタシが言うのもなんだけど、女子力高めな発言を。次、6曲目が「Ring」で、ここに到ってようやく気づいたけど、全体的にこのアルバムのテーマは「諦め」というか「許容」というかだよね。
U・B> はいはい。無力感みたいなのが通奏していて、でも、それに対して絶望しているわけではない。ちょうどこの曲の「僕らはいつの間にか心にもない 思いについてずっとありったけの声で 歌を歌い続けた 何処にもない世界に向けて それに気づいてしまったよ」(※22)ってのが、適切な感じ。
空虹桜> 「気づいてしまった」
U・B> んだ。世の中の大半のことって、気づかなければどんだけ楽なんだろうっていうさ。それこそ「好き」ですら、気づかなければ振り回されないわけですよ。
空虹桜> コロナだって、新型だって気づかなければ、ただの風邪だったのにね(※23)
U・B> ウマいこと仰る。
空虹桜> 7曲目が「Uiyo」で、たぶん漢字で書くと「憂い世」
U・B> かな?たぶん、この曲で「『あふれるミルクのように 涙がこぼれていたら 少しはマシかな? 変わりはしないよね?』」(※24)言ってる人って、「No Rain (No Rainbow)」で「『雨が降った後にかかる虹のようなものよ』」(※25)言った人と同一人物だと思うんです。
空虹桜> ほぉ。それで?
U・B> 客観的には、トンデモじゃないですか。こゆこと言う娘(※26)
空虹桜> メンヘラ(※27)でも可。これぐらいイタい娘、好みでしょ?
U・B> ええ。まったくで。絶対相手すると疲れるから厭ですけど、好みです。
空虹桜> キモヲタめ。
U・B> 否定はしないですけども。この曲と、その前の「Ring」の対応っぷりが絶妙ですよね。
空虹桜> 両ヴォーカル揃って、同じような諦めと許容を唄ってる。
U・B> 珍しいですよ。わりと二人のコントラストがハッキリしていたんだけど、トーンが似ちゃうって、切羽詰まってる感がある。
空虹桜> ずっと一緒にいれば似てくるってわけではなく?
U・B> それもあるかもしれないけど、今さらですよ(※28)それより、この似て創で似てない二人が、同じような感慨を抱いてしまう世の中っていう。
空虹桜> たしかに今さらか。そして9曲目が「Time」
空虹桜> どの辺が?
U・B> 晃さんが「平行」と見るモノを健太郎は「交差」と見るっていう二人の違い。
空虹桜> わかるようなわからないような。
U・B> 同じモノをどう見るかなんだけど、「平行」と「Time」は同じことを描こうとしてるんじゃないかなぁっていう。ザックリ言うと街と世界と自分の関係性。
空虹桜> ザックリしすぎてよくわからん。このアルバム全体として、曲調がヒップホップに近接してるよなぁとは思う。
U・B> ループミュージック遣いなところと、曲の短さがね。一番長いのでも「With You (Get It On)」の4:41。
空虹桜> その最後に「Pinfu」でfeaturing 呂布カルマ(※31)
U・B> 何度も繰り返される「この街は平和に見える」とか強烈な「十人十色 混ぜると糞の色」なんてパンチラインの強烈さはそこら中で喧伝されてるけど、「綺麗 汚い 趣味の問題」や「大人になっても毎月小遣い」(※32)みたいな斜の構え方って、流石呂布カルマだし、それこそスチャさん(※33)とかが言いそう。
U・B> はいはい。そう、だから、ここで向かう街は荒野かもしれない。
空虹桜> 「平和に見える」だけだからね。
空虹桜> 居心地いい?
U・B> すくなくとも「俺ら可愛い子にはめっちゃ優しい またしたくなったら Call Please 逆にしたくないこと多過ぎ」(※38)な程度には言い。
空虹桜> 強引だ。じゃあ、最後。ま・と・め・ろ(※39)
U・B> 「Still Life」って「静物」の意味だけど、個人的には「まだ生きてる」って訳したくて、空虹さんが言及してらしたけど、コピペみたいに平和に見える世界に諦めを抱いてるけど、死ぬこともできずここに立ってるって、みっともないことかもしんないんですよ。
空虹桜> 荒野へ行くって言ってたのにね(※40)
U・B> 実際問題、こうやって今自分たちが息をしているこの街そのものだったわけで、じゃあ、この世界でじっとしていることは荒波をやりすごす忍耐力だとか、それは結構凄いことなんじゃないかっていう。
空虹桜> だいぶ日本語メタメタだけど、で?
U・B> もうどっちに転んでも絶望しか残ってない世界でプロテストする意味ってなんなんですかねぇ?ってのと、でもやるんだよ!っていうのが両立してるアルバムだなぁと思っていて、きっと、向こう10年は世界に寄り添い続けるんじゃないかなぁって思うんです。
※1^ 先月ちゃんと世界をdisった:どんなに正しい事実でも、不安ならそれを知らなくていいよ。でも、その不安を押しつけないでください。
※2^ アナログフィッシュ:最近は主にアルファベット「Analogfish」名義で活動している3ピースロックバンド。メンバは1999年に結成の下北系ギターロックバンド。長野県下伊那郡喬木村出身の下岡晃(Gt&Vo)と佐々木健太郎(Ba&Vo)に、斉藤州一郎(Dr)
※3^ 2018年のアルバムってことは、もう2年前:本稿は2020/2公開です。
※4^ 我々、すでにアラフォーで老害年代:U・Bと空虹桜も1981年生。しかし、本物の老害と比べると、まだ老害感が小さい?
※5^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※6^ アカペラコーラス:人間の声だけで奏でられる音楽。
※7^ なんでもないようなことが幸せ:鉄板ネタであるところのTHE 虎舞竜「ロード」の歌詞より引用。
※8^ THE 虎舞竜:元キャロルのジョニー大倉プロデュースでデビュしたロックバンド。ヴォーカルはご存じ高橋ジョージ。
※9^ プロテストソング:政治的抗議のメッセージを含む歌の総称。アナログは、そのようにカテゴライズされるけど、そんな必死ではなく、ただ、厭だって履き出してるだけだと思う。
※10^ ポエトリリーディング:詩の朗読を英語で言うと。
※11^ どんなに親しくたって、君と僕とは他人だって、川本真琴も唄ってたじゃないですか!:川本真琴は福井のシンガソングライタ。「君と僕が他人だ」っていうのは、「DNA」の歌詞から援用。
※12^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※13^ KETTLESのオカヤスシズエ:KETTLESは日本の2人組ロックバンド。オカヤスシズエはドラム。過去にアルバムレヴュをしているので、興味がある人は。
※14^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※15^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※16^ インポ:かつてはインポテンツと呼ばれるのが一般的だったんですよ。今じゃめっきりED。ちなみに、勃起力には自信があるけど、オナニーのしすぎで中イキがなかなかできない(なんの話だ)
※17^ 3曲下岡曲が続いてからの健太郎曲:下岡晃も佐々木健太郎もヴォーカル&メロディメーカで、それぞれ自分で作った曲を唄う、なかなか希有なバンド。
※18^ チャンポン:「さまざまな物を混ぜること、または混ぜたもの」を意味する言葉、
※19^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※20^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※21^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※22^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※23^ コロナだって、新型だって気づかなければ、ただの風邪だったのにね:SARSだって鳥インフルエンザだってね。
※24^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※25^ 「No Rain (No Rainbow)」はアルバム「ALMOST A RAINBOW」の4曲目で、直前の鉤括弧は「No Rain (No Rainbow)」の歌詞より引用。
※26^ こゆこと言う娘:本文でツッコミ漏れてるけど、ここで「女の子」と断言するのはU・Bさんのジェンダー感が出ているなと。差別的な意味で(by 空虹)
※27^ って、アタシも乗っかってるな・・・アカンなぁ・・・(by 空虹)メンヘラ:ネットスラング。2ちゃんねるのメンタルヘルス板にいる人たちを「メンヘラー」と呼んだのに由来。
※28^ 今さらですよ:下岡と健太郎は、中学だったからの同級生。
※29^ この辺の高音を聞かせようとする唄い方が嫌い:U・Bはロックバンドの裏声が嫌いです。ホント無理。
※30^ 健太郎版「平行」:「平行」はアルバム「Life Goes On」の5曲目。
※31^ 呂布カルマ:日本のラッパー。「フリースタイルダンジョン」のモンスター。
※32^ 鉤括弧付きの発言はすべて歌詞より引用。
※33^ スチャさん:空虹さんが大好きな日本のラップグループ、スチャダラパーの略称。
※34^ そだねー:北海道弁。まだ言ってるとか言うな!
※35^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※36^ マッドマックス:1979年公開のオーストラリアのアクション映画、および、その後のシリーズ。
※37^ メタルマックス:マッドマックスに影響を受けたTVゲームシリーズ。日本の荒んだ人々はだいたい好きな30年続くタイトル。
※38^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※39^ ま・と・め・ろ:とにかくパーティを続ける、「今夜はブギー・バック」大好きっ子が反応する言い回し。
※40^ 荒野へ行くって言ってたのにね:アルバム「荒野 / On the Wild Side」の2曲目。そして荒野へ。その足で荒野へ。