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U・B> よく考えたら、たぶん来月は2年ぶりにあの話が出来るハズ(※1)なので、じゃあ、今週はどうしようかというところで、そうだ。後藤さん(※2)の話をしたのだから、ミドリ(※3)の話をすればいいじゃ無いか!と「ファースト」(Amazon / HMV)を語るのです。曲数も少ないので。
空虹桜> 昔から、いつか巻き込まれるとは思ってたけど、いよいよか・・・
U・B> 察しがいいなぁ。まぁ、10年前なら煩型が存命だったやもしれないけど、今ならなに言ってもそこまで目くじら立てられないでしょ。
空虹桜> アンタが、煩型の典型でしょうに。
U・B> そうでもないですよ。安全圏です。それはともかく、1曲目「わっしょい。」
空虹桜> 久々に聴いたけど、妙に文学的な言い回しとか、椎名林檎の影響が見え隠れする(※4)けど、ドラムとピアノが跳ねてるから、そんなのが見えなくなってる変な曲。
U・B> 俺も、最近聴いてなかったんで、久々に聴き直したんですけど、懐古趣味のオッサンを差し引いたとしても、今のバンドにはないアングラ感ですよね。
空虹桜> アングラ全盛期の70年代ではなく、「サブカル」の語が力を持って、フェミニズム的なモノもある程度浸透している時代のアングラ。
U・B> なんッスかね。俺自身はコテコテのサブカル鬼畜野郎だという自覚症状を持って生きてますけど、「アングラ」の4語には妙な憧れがありますよね。
空虹桜> 言わんとしてることはわかるけど、じゃあ、ミドリがアングラかというと、それよりも「関西ゼロ世代」って括りの一角だった(※5)わけでしょ?アンタからの伝聞情報でしか理解してないんだけど。
U・B> そうですね。そのフレームがアングラではあったんで、一角にいたバンドであれば必然的にアングラでもあると言えるんだけど、別にアングラか否か論争がしたいわけじゃなくてですね、この曲のミソは、さっき空虹さんも仰ってましたけど、「加熱されてく性衝動 もどかしい性欲をいざ解放 迷走つづける処女ひとり」(※6)みたいな歌詞を、ちょっとジャジーなメロディに声ネタ交えて唄うところにあるんです。
空虹桜> 言い切った。
U・B> ええ。今聞き返すと、この曲1曲目に持ってきたのは慧眼で、荒削りさは見えるけど、魅力が詰まってて良い曲ですよ。
空虹桜> 1曲でカロリィ持ってかれる感はある。で、2曲目が「お猿」で、これを聴いたら童謡「お猿のかごや」(※7)はエロい曲にしか聞こえない。
U・B> もともと、思春期の少年が自慰行為に耽ることを「猿になる」と言ってたりするわけで、そこからヤリマンの娘にも「猿」の形容を使うところが当時は驚きだったんだけど、アレですよね。今聴くと、「エッサ エッサ エッサホイ サッサ お猿のかごやだ ホイサッサ」(※8)って、腰振ってる感ある。
空虹桜> 年寄り臭いなぁ。
U・B> 否定はしない。ちなみに当時は「お猿のかごや」でモッシュしてました(※9)からね。我々。
空虹桜> それは知らんけど、素直に歌詞を読み込むと、ちょっと頭の弱い娘が薬に溺れつつ、水商売に売られてったって話で、わりとちょい昔の「AV嬢あるある」みたいな感じ。
U・B> アレですよ。よくある「女の子はちょっと馬鹿な方がいい」みたいな男の妄想を地で行くとこですよね。
空虹桜> そうなんだよね。で、今だとそこまで直接言えないから、「承認欲求」みたいな言葉ですり替えたりもするんだけど、結局、「ワタシが必要とされるのはワタシの肉体に価値がある」とか「若い娘であることに価値がある」とは理解せず、「必要としてくれるからヤらせる」みたいなとこに着地するパターンで、当人的にそれでいいならそれでいいんだけど、それを見てるアタシは辛いな。っていう。
U・B> 空虹さん的にはそうでしょうね。
空虹桜> うん。それで、モッシュしてたお前らなんなの?
U・B> なんなのって・・・すみません。
空虹桜> べつにいいんだけど。そこから3曲目が「ああ嫌」で、そういうふうに見られることもあっただろう後藤まりこの嫌悪表現にも見受けられる。
U・B> 後藤さんは元来頭の良い娘ですからね。
空虹桜> そうね。ある種のエキセントリックさが地頭の良さに依拠してるのはわかる。
U・B> そうなんですよ。で、この曲だと「「いい子」と僕を呼んで 「いい子」と頭を撫でながら 易しく言って「あんたなんかいらない」って 走り続けて 目が見えなくて 何もわからん何もわからん どうしようもないねん。」(※10)って、もう後藤さんの本音だなぁっていう。
空虹桜> 「いい子」と同時に「あんたなんかいらない」が必要だっていう。
U・B> そこは劇場型(※11)ってのもあるんだとは思うんですけど、ミュージシャンというか表現者はだいたいそんな感じだし、両方必要なのって、肯定されすぎると逆に不安になるからでもあると思うんですよね。
空虹桜> そうね。多様性が失われると不安で仕方ないよね(※12)
U・B> そうですね。んで、我々は単一性を強制されるのが心から嫌なんですよ。本当に。切実に。
空虹桜> じゃあ、4曲目が目玉の「A・N・A」
U・B> 「アナ見た事あるか?と聞く、お前のアソコはそう、秘密の花園 アナ見た事あるか?と聞く、お前のアソコはそう、涙がたまり」(※13)
空虹桜> ドストレート。
U・B> 野茂もビックリなね(※14)しかも、これやってた頃って、「セーラ服着た僕っ子がパンチラやブラチラ気にせず、ステージ上で叫んで暴れて流血し、高いとこ昇って飛び降りる」っていう色物枠だったわけですよ(※15)
空虹桜> たしか、パンツ見えて喜んでたよね。
U・B> ええ。見せパンでしたけど。つか、その10年ちょっと後に、ライヴで全裸を見るとは思わんかったですけどね(※16)
空虹桜> ん?なにを・・・言っているのかな?
U・B> 男性ロックバンドとしてはゴイステからの銀杏で、峯田がチンコ出して捕まったりしてた(※17)けど、そっちの路線はご時世もあり、流石に死に絶えてしまったんだけど、歌詞や音楽の方向性としては、日本マドンナから東京初期衝動に細く長く連なってて(※18)、実は、下手なラッパーの男の子ですらSEXを唄えなくなるかもしれない状況だと、女の子しか露骨なこと唄えないんですよね。
空虹桜> ああ。それはあるか。今だと、とりあえず申し訳で「PARENTAL ADVISORY」書く感じ(※19)
U・B> ええ。R-18さえ付ければ、どんだけ拷問を映像化してもOKみたいな自由はあってしかるべきだと思うんです。
空虹桜> 実際、オフィシャルでやってるヤツらはいるからね。まぁ、レイティングと入手困難度さえ適切に調整されていれば、思想・信条の自由は守れるからね。
U・B> そうなんですよね。未来永劫「金太の大冒険」唄えないわ、初代インカ皇帝の名前を言えないわったら、つボイノリオじゃなくても困ってしまいますよと(※20)
空虹桜> ん?なにを・・・言っているのかな?
U・B> こっから怒濤のように凄まじい曲が続くんだけど、やっぱり「A・N・A」のインパクトが素晴らしくて、この曲があるから残り2曲とのギャップや、メロウさが引き立つ。あと、この曲でキャッチィなフレーズを連呼すればウケると思ったんじゃないか?
空虹桜> 久々にファンがファンと思えぬ発言を。あと、2005年にこれを唄ったバンドが、その後メジャ行ったってのは、日本のフェミニズム史的にも結構重要な気はする。さて、5曲目は無闇に危機感を煽られる「ロマンティック夏モード」
U・B> 何故に?
空虹桜> イントロのピアノループが、なんか脅迫的というか、自分で勝手に切羽詰まって自滅する感じがする。
U・B> なんとなく言わんとしてることわからないじゃないけど、たぶん、勢い込んでテンポ上げて、手が着いてってないだけだぞ。今回聞き直して、結構リズムや音外してることに気づいた。
空虹桜> ああ。そだね。外してるね。
U・B> しかしてしかして、この曲で大事なのは、終盤に小銭さんが叫ぶところです(※21)ミドリってバンドは、小銭さんが支柱だったけど、小銭さんが後藤さんを支えきれなくなったんで解散したんだと、俺は思い込んでます。
空虹桜> よくわからんけど、たしかにドラムは安定してる気がする。よくわからんけど。
U・B> いずれにせよ、この曲「ロマンティック」言ってるけど、「ロマンティックに腰を振る 五臓六腑に スグいけそうでいけなっくても やりとり重視」(※22)って、結局、夏だからヤるんです。っていう潔さね。だから、「一夏」感があって、「一夏」はある種テンプレ的なロマンスではあるから間違ってない。
空虹桜> 一夏の話を、たまにはアタシに貢げよ。
U・B> いきなり、なんつー言い種。
空虹桜> ラスト、6曲目がしっとりと「POP」
U・B> 「十年後も想い変わらず、あなたを好きでいたならあたしを見て下さい。」(※23)に尽きるんですけど、今、このタイミングでミドリのレヴュしてるのとかも、「十年後も想い変わらず、あなたを好きでいたなら」じゃないですか。
空虹桜> 20年超も似たようなことをダラダラ話してるから、「好き」なのか「飽きない」のかの区別が付いてないだけな気もする。
U・B> なるほど。
空虹桜> 納得するんだ。
U・B> 一理あるなぁと。でさ、実際、アルバムこの曲最後に持って来ざるを得ないんだけど、ライヴでも最後だったりすると、これ聴いて泣いてる娘がいたりしたわけですよ。当時。
空虹桜> はいはい。ちょうどこの歌詞って3曲目「ああ嫌」と同じよなこと唄ってて、「ある朝、突然あなたが死んだら。 あたしは大変喜ぶでしょう。「もうこれ以上涙を流すことはない。」と言ってたくさん泣いて、悲しむでしょう。」(※24)って、真っ当なエキセントリックさに聞こえて、好ましいし、こういうの好きな女の子って、確実に存在するよね。
U・B> わりと空虹さんもその部類じゃないですか?
空虹桜> 不惑なるのに女の「子」はアウトだよねぇ(※25)
U・B> 昨今のジェンダー論からすると、自虐に対してどういうツッコミを入れればいいのかわからんのですよ。なに言ってもアウトになりそうだから。真面目に。適度に話の向き先変えるのに超頭使う。
空虹桜> たしかに。そうやって話逸らすわけだ。
U・B> 学ぶな。
空虹桜> そろそろ締めてください。
U・B> その前に「POP」の話で、今、たぶんあの頃泣いてたような娘も、子どもいたりすると思うんですよ。もしかしたらバリキャリで、心の中でずっと「デストロイ」(※26)言ってる娘とかもいると思うんだけど、その娘らに、「あの頃のミドリとはなんだったのか?」ってのをちょっと訊いてみたいなとは思ってて、
空虹桜> ちょっとそれは面白いカモ。
U・B> でしょ?んで、全然POPではない「POP」という曲をどう受け止めてたのか?とか話したいし、最後今の方が全然POPな後藤さんに訊きたい。
空虹桜> 小沢健二論考では結構ありそうなアングルではあるけど(※27)
U・B> ですね。あと、フィッシュマンズ界隈とか(※28)でも、正しくミドリのマネージャだった剱のモーヲタっぷりが映画になるのだから、関西ゼロ世代と掘り甲斐もマーケットもあると思うんですよね。
空虹桜> じゃあ、アンタやんなよ。
U・B> ねぇ。ただ如何せん、俺、ミドリと赤犬(※29)ぐらいしか持ってないんだよ。あと、金にしたいから、発注仕事にならんかね。
※1^ たぶん来月は2年ぶりにあの話が出来るハズ:これを喋ってた時にはできると思っていたのだよ。これを喋ってた時は・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
※2^ 後藤さん:日本のシンガソングライタ後藤まりこのこと。アレな人たちは、皆、継承付けて呼ぶ。
※3^ ミドリ:ハードコア・パンクロックで「大阪のいびつなJUDY AND MARY」2010年解散。メンバの変遷が激しすぎるのだけど、ドラム小銭喜剛、ギター・ヴォーカル後藤まりこは不変。
※4^ 椎名林檎の影響が見え隠れする:1998年、「歌舞伎町の女王」以降、日本の女性ヴォーカリストは多かれ少なかれ椎名林檎の影響下で歌を唄っているというのがU・Bの評価。
※5^ 「関西ゼロ世代」って括りの一角だった:2000年頃に関西で同時多発的に登場したアレなバンドの総称。現役で最前線張ってるのはオシリペンペンズ。ググって出てきたこの記事だと「ポスト関西ゼロ世代」扱いになってるけど、まぁ、似たり寄ったり。
※6^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※7^ お猿のかごや:山上武夫作詞、海沼實作曲による日本の童謡。1939年12月発売。
※8^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※9^ モッシュ:主にロックのライヴで見られる観客による派手な押し競饅頭(待て)
※10^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※11^ 劇場型:DSMによる分類だとB群に分類される。と、書いてみたけど、そこまで理解して喋ってるわけではないです。ごめん。
※12^ 多様性が失われると不安で仕方ないよね:不安にならない人って、単純に想像力は欠如している人だというのがアタシの評価(by 空虹)
※13^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※14^ 野茂もビックリなね:昭和の受け。今の若人は野茂英雄を知っているのか?
※15^ 「セーラ服着た僕っ子がパンチラやブラチラ気にせず、ステージ上で叫んで暴れて流血し、高いとこ昇って飛び降りる」っていう色物枠だったわけですよ:曲順的に次の曲だけど、たとえばYouTubeに上がっているこういうライヴ映像を見ていただくとイメージは伝わるかと。
※16^ その時のライヴレポがこちら。一部界隈では騒然とした。
※17^ ゴイステ:日本のロックバンドGOING STEADYの愛称。2003年に解散。 銀杏:日本のロックバンド銀杏BOYZので略称。 峯田がチンコ出して捕まったりしてた:ゴイステや銀杏のフロントマンにしてヴォーカル、峯田和伸がROCK IN JAPAN FESTIVAL 2005で全裸になり、書類送検されたのが2005年。
※18^ 日本マドンナ:2009年に結成された日本のスリーピース・ロックバンド。一度解散したが、2018年以降再結成・活動再開している。 東京初期衝動:2018年結成の日本のロックバンド。
※19^ PARENTAL ADVISORY:アメリカで、未成年者にふさわしくないと認定された音楽作品に全米レコード協会(RIAA)が添付する勧告のこと。ラベルがシンプルでカッコいいので、Tシャツとかトートにプリントすると映える。
※20^ 金太の大冒険:中学時代の友人の持ち曲。オメでたい頭でなによりがカヴァしてるけど、ここでは元ネタの方。詳しくは以下YouTube。 初代インカ皇帝:マンコ・カパック(クスコに成立した初期王朝) つボイノリオ:名古屋の雄。有限会社坪井令夫商店代表取締役。
※21^ 小銭さん:ミドリのオリジナルメンバ。※3記載の通り、担当はドラム。
※22^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※23^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※24^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※25^ 不惑なる:1981年生まれ。
※26^ デストロイ:ある時からミドリの代名詞になったフレーズ。追々言及します。
※27^ 小沢健二:今の子は存外知らないミュージシャン。なにかにつけて出てくる名前。
※28^ フィッシュマンズ:1987年に結成された日本のロックバンド。2021/7/9より「映画:フィッシュマンズ公開。
※29^ 赤犬:日本のバンド。大阪芸術大学出身なので、山下敦弘や熊切和嘉の映画音楽を作ってたりもする。代表曲は「U.N.C.O.~うんこが好きです~」