その42「あらためまして、はじめまして、ミドリです。」

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U・B> アルバムレヴュをしばらくしてなかったので、勘を取り戻すためにも、だいぶ間を開けてしまいましたがミドリ(※1)の話をします。今度はいよいよSONYから発売してしまった「あらためまして、はじめまして、ミドリです。」(Amazon / HMV / Apple Music

空虹桜> 歳のせいか、アルバムレヴュやる体力を捻り出すのがなかなか大変だね。

U・B> ええ。しかも、2008年発売のアルバム。つまり、15年前のを今頃レヴュするわけですよ。

空虹桜> その辺も、あえてではあるのだけども。まずは1曲目「スキ」

U・B> 後藤まりこ(※2)が可愛く「好き」を連呼する、そんなの好きになるしかないやん。みたいな44の名曲。

空虹桜> ああ。久々にその手の言い種聞いたけど、気持ち悪いな。お前。

U・B> 酷い言い方しますね。俺はなにも間違ったことは言っとらんぞ。

空虹桜> それを気持ち悪いという。打って変わって、2曲目はこのアルバム以降、バンドの代名詞となって「ゆきこさん」

U・B> デストローイ!(※3

空虹桜> デストローイ!

U・B> だって、こんなの食いつくに決まってるじゃないですか。ハジメタル(※4)がなに言ってるのかわかんないのも引っくるめて、あっ、ミドリだ!って感慨ひとしおでさ。アルバムタイトルに戻れば、見事に「あらためまして、はじめまして、ミドリです。」ですよ。

空虹桜> 「『愛』を喰いちぎって『過去』を振り返って もう泣くのはやめて グッドデストロイキューティーハニー」(※5)とか、意味のわからなさが良いんだけど、全部デストロイ!に掻き消されてしまう。

U・B> そうなんですよね。その点においては、失敗作でもあるわけですよ。結果、自嘲気味に後藤さんが「デストロイのバンド」とかMCで言っちゃう。

空虹桜> スチャさんが未だに「ブギーバックの人」って言われるようなモノっていう(※6

U・B> 「まだやってたんだ」言いたがる馬鹿どもみたいなね。百万歩譲っても、本人の前で言うな馬鹿。

空虹桜> 関係ない悪口が過ぎるので、3曲目。

U・B> デストローイ!

空虹桜> 五月蠅いよ。3曲目「かなしい日々。」

U・B> 出だしから「お前斬る お前斬る 脚、朽ちる速過ぎる お前斬る お前斬る いじらしく気が●●」(※7)と歌詞カード上は伏せ字になってるけど、実際は「気が狂う」と唄ってるわけですよ。この曲はタイトルからしたってここを伏せ字にしたら意味が無いじゃないですか。これだからメジャは!っていう。

空虹桜> 糞なパートナのせいで発狂しそうだわ。って曲だもんね。

U・B> ヘテロの前提(※8)ですけど、男ごときのせいでそんなことなる必要ないじゃないですか。

空虹桜> まぁね。つか、男でも女でも無性でも、そもそも他人に振り回される必要が無い。

U・B> 振り回されたいですけどね。悪い顔してる時の女の子が一番可愛いですよ。

空虹桜> 黙れよ変態。

U・B> 人間誰しも変態です。

空虹桜> 正論ぶってなにを言うか。次、4曲目「お猿」はいろいろツッコミ何処があるけども、やっぱり「あの娘はちょっと手強いぞ 魔法のクスリが大好きで カワイイ笑顔を浮かべては 見知らぬ誰かに駆け寄った」(※9)の危うさだよね。

U・B> ええ。もちろん、ここでの「猿」は性的な隠喩なわけじゃないですか。すると「エッサ エッサ エッサホイ サッサ お猿のかごやだ ホイサッサ」(※10)が、キメセクに聞こえるという。

空虹桜> 露骨に言うとね。

U・B> この辺の作詞の巧さは後藤まりこの真骨頂だと思うんですけどね。地頭がいいけど、その地頭を巧いこと使いこなせないという。ある意味才能に取り殺されてる感ではあるんですけど。

空虹桜> 何度か話してる気はするけど、たしかに、後藤まりこには地頭いい感があるんだよね。しかしながら、エキセントリックでもある。

U・B> だからこそ大好きでもあるんですけどね。頭がいい気違いの女の子最高!っていう。

空虹桜> 歪みすぎてて、辛い。っていうか、あんたに好かれた女の子は全員悲劇だよ。理由からして。

U・B> 否定はしないが、惚れっぽいわけでもないので。っていうか、頭いいの方が優先順位は高いですからね。

空虹桜> 知らねぇよ。次、5曲目「根性無しあたし、あほぼけかす」なんだけど、タイトルに反するかのように出だしから歌詞が「カワイイあたしよ死なないで 大人になっても生きていて 人はみんな忘れてく生き物だから 忘れましょう あたしから ああ嫌な子だ」(※11

U・B> でも、もの凄く切実な歌詞でもありますよね。

空虹桜> おそらくはね。それこそタイトルも踏まえれば、いじめられてる子が自殺未遂したように読める。

U・B> 呪いのように、自分は可愛いと暗示をかけて、どうせみんな忘れるだから忘れましょう。と。

空虹桜> 「辛いのは今だけだ」って大人は軽はずみに言うし、実際問題としてその時だけではあるんだけど、でも、だからって今が楽になるわけではない。

U・B> さっきの空虹さんの読みを踏まえれば、未遂であることを呪詛しつつ自分を肯定する背反な思考って、子どもがやってるんだとしたら単純にキツいし、やってる子は一定数いる。

空虹桜> なので、1:39より長い曲には出来ないんだろうね。って気もする。6曲目は「ちはるの恋」

U・B> ♪愛することに疲れたみたい(※12

空虹桜> 唄うなよ。っていうか、なに?

U・B> 松山千春「恋」

空虹桜> ああ。そゆこと?

U・B> 歌詞には「ヘタクソな、ちはるの恋を歌ってた あの人に、あの人に、もう1度、会いたいな」(※13)あるので、おそらくは。

空虹桜> ホントだ。でも、そうなのか?

U・B> 全然意味わからんもん。それぐらい便り何処内と辛いべ?「お前の父ちゃん毎回ね、友達伝いに伝書鳩。」(※14)だぞ。


空虹桜> まぁたしかに。

U・B> 凄い歪んだ聴き方をするとNTR(※15)な家族崩壊の曲なんだけど、曲全体に暗さとか、背徳感は無い。


空虹桜> 一方、7曲目「ひみつの2人」は、わかりやすいというか、ストレートな歌詞の印象。

U・B> ですね。ミドリの頃の後藤さんといえば、赤いギターを弾いてらっしゃったので、自分のことかなぁとは思うんですけど、やっぱり気になるのは「お宅の猫が鳴いている。」(※16)で、後藤さん猫飼ってらっしゃるんで、本当に猫でもいいし、タイトルも踏まえれば猫は相手の奥さんですよねぇ。っていう。


空虹桜> 不倫の曲。

U・B> 隠喩が素直なのかはよくわからんけど、素直に意味を取るとそうなりますよね。


空虹桜> 全体的に見回すと、バンド関係者との不倫だよね。

U・B> ええ。おそらくは。しかも歌詞の最後が「1、2、3、4 ごめんね ひみつの2人で終わろうよう。」(※17)ってさ、構成としては良いんだけど、リアルだと結構えげつないというか、ある意味都合のいい関係で終わらせたわけじゃないですか。


空虹桜> まぁね。でも、「ひみつで終わらせる気は無い」って反逆というか、リベンジポルノ的でもあるわけだよ。

U・B> ほぉ。なるほど。たしかに。


空虹桜> だいたいさ、モノ作ってるよな人間相手に性だろうが愛だろうが友情だろうが、なにか関係性を持ってしまったら、そりゃネタにされるに決まってんじゃん。

U・B> 空虹さんが仰るとエグ味が増しますね。


空虹桜> 悪かったわね。次、8曲目「5拍子」は、たぶんホントに5拍子。

U・B> たぶん。


空虹桜> アタシ、リズム感悪いからさ、その辺駄目なんだよね。だってさ、BPM上げれば5拍でも12拍でも入るじゃん。まだ3拍子はわかるんだよ。減ってるから。

U・B> 酷いな。


空虹桜> 別にアンタも音楽出来る人じゃないでしょうに。

U・B> ええまぁそうですけど。それはともかく、この歌詞はいかにも後藤さんなのだけれど、この歌詞って、自己肯定感低い子が、肉体を求められることで自己肯定感をキープしてる的な話じゃないですか。


空虹桜> 「純粋に生きたかった ただ それだけです」と言っておきながら「とめれずに会いたくって 抜け殻の恋をする」だからね(※18

U・B> 求められることがメインで、性的なことは副次的であるんだけど、そのわりには最後に「快楽に『愛』をみた 抜け殻の恋をする」(※19)と唄ってしまうのが後藤さん的だなぁとも。


空虹桜> そこは単なるオッサンの言説であって、それこそ、性的に一番嫌いなタイプにチンコ擦られ続けたら射精するわけじゃん。そこで「体は正直だな?」って言われて頷く?

U・B> えげつないことを仰いますね・・・


空虹桜> どちらかというと、最後の歌詞は「抜け殻の恋」の方が主で、実際歌詞の前半でも「帰れずにさみしくって 抜け殻のふりをする」(※20)と唄っているとおり、ずっとこの歌詞で自分は客体でしかないんだよ。

U・B> たしかに「抜け殻」であることが重要ですよね。この歌詞。


空虹桜> 抜け殻ってさ、蛹が成虫に孵った名残なわけじゃない。でも、ここではそれが恋をするわけだよ。つまり、アンタがさっき言ってたとおり、自己肯定感の低さを起点に非生物のような存在である自分が、成虫になれるかもしれないって願望でもあるわけだよ。少女趣味的だけれども。

U・B> 今聞いて思ったけど、「少女趣味」って、結構今ドキ危うい日本語ですね。


空虹桜> 不意打ちで凄いところからツッコミ入れてきたな・・・いいや。9曲目「ハウリング地獄」だけど、そこまでハウリングしていない。

U・B> あれ。リモート会議増えたじゃないですか。ハウリングとリバーヴというかループバックの区別ついてないヤツらが世の中多いのな(※21


空虹桜> 細かっ。

U・B> いや、気になるだろ。普通。


空虹桜> そうですね。気になる方だけ気になさればよろしいかと。

U・B> 冷たい・・・とりあえず、この曲は「しあわせ、こわい。」(※22)に尽きるのだけど、感想で?で、「トゥトゥトゥ」唄ってる後藤さんは可愛いです。


空虹桜> もう、可愛い言いたいだけっていう。

U・B> いや、可愛い子には死ぬまで可愛いって言い続けますけどね。


空虹桜> なんだそれ。最後、10曲目が「無欲の無力」で、途中何やら叫んでるけどインスト(※23)で、フリージャズ感。

U・B> ねぇ。このフリージャズみとヴォーカルがセーラ服着て客にダイブするというごった煮がミドリのいいところだったのだけど、1曲目か真ん中に持ってくるインストを、平然とメジャで発売するアルバムの最後に持ってくるのが恐ろしい。


空虹桜> とはいえ、この扱いズラさをわかってお前ら契約してるだろうと。

U・B> ええ。だから、このアルバムのタイトルが「あらためまして、はじめまして、ミドリです。」って、納得感あるじゃないですか。


空虹桜> そうね。

U・B> なので、このアルバム以降はさっきも言ったけど「デストロイの人」になってしまったとはいえ、最後にこんな曲持ってきたバンドがいたってことは忘れたくないんですよね。


※1^ ミドリ:ハードコア・パンクロックで「大阪のいびつなJUDY AND MARY」2010年解散。メンバの変遷が激しすぎるのだけど、ドラム小銭喜剛、ギター・ヴォーカル後藤まりこは不変。
※2^ 後藤まりこ:※1のとおり、日本のシンガソングライタ後藤まりこのこと。
※3^ デストローイ!:歌詞より引用。
※4^ ハジメタル:「ミドリ」の鍵盤奏者。ミドリ解散後、GLAYのサポートや楽曲提供を行っている。
※5^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※6^ スチャさんが未だに「ブギーバックの人」って言われるようなモノ:空虹さんが大好きなスチャダラパーの代表曲が「今夜はブギー・バック」
※7^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※8^ ヘテロの前提:ヘテロ・セクシャル、異性愛者の前提。
※9^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※10^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※11^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※12^ ♪愛することに疲れたみたい:松山千春「恋」の歌詞より引用。
※13^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※14^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※15^ NTR:「寝取られ」の略。
※16^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※17^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※18^ 2つの鉤括弧は歌詞より引用。
※19^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※20^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※21^ ハウリング:スピーカからの出力の一部がマイクに帰還されたことにより生ずる発振現象。 リバーヴ:残響。 ループバック:意図的な処理や変更なしに送信元に戻って来る、電子信号、デジタルデータストリーム、またはアイテムの流れ。
※22^ 直前の鉤括弧は歌詞より引用。
※23^ インスト:インストゥルメンタル。つまり、器楽のための楽曲のこと。ヴォーカルが無い曲。途中でBPMの注釈入れ忘れたけど、まぁ、いいか・・・

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