10分前
止めて、蹴る。
その基本的な動作があまりに綺麗で、僕は君のプレイを「美しい」の定義にしたんだ。6月。初めて県選抜の合宿で見たあの日。サッカーの神様がプレイしたら、きっとこんなふうだって、思ってしまったんだ。
あの日の刷り込みのせいで、日本でもセリエでもプレミアでも、ちっとも君を越えるフットボーラには出会えていない。なにより、未だに僕はガゼッタなんかに「トラップがヘタクソすぎる」なんて書かれてたりする。
たしかに僕は、僕の中の君を、一度も越えられずにいる。
スパイクの紐を締め直す。君を越える僕の右足からしっかりと。
どこかで見ていてくれると良いな。今日こそは、今日だけは。君を越えるはずだから。爪先で触れるぐらいの僅かさでいい。君を越えて、白いゴールへと。
W杯開催記念書き下ろし
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