2021初夏

 恐ろしいほどにいつまでもずっと今日が続く。昨日と明日は存在するけど、数字でしか示されないから実感を伴わない。
 メリもハリもない怠惰。
 気力はドライアイスのように溶けて消える。「出歩くな」と言う二酸化炭素と、ただ生きて吐き出す二酸化炭素は、科学的に社会的に経済的に大差はない。そんなこと、誰も気にしない。

 空は青いし、雲は白いし、太陽は赤い。

 静かに発症する狂気は、馴染みがありすぎて目新しさに欠ける。この程度のことにすら当たらない己の運に絶望する。
 コピー&ペーストできる程度のモブな実感は、柔らかに真綿で首を締め上げる。
 顕示するにも肯定するにも自己が無い。はじまらないのは、とっくの昔に終わっていたから。八方も九方も塞がれて、どこへ行くことも許されない。
 否定語を口にすることすら甘ったるくて苦しい。苦味も酸味もしっかりしていて辛さに口が痛い。喘げば喘ぐほど同じ言葉が逆流する。新しいことが言えない。
 そして、今日も続く。

書き下ろし

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