綺麗な考え方を

　わたしはバカなので、誰かの言ったことを理解するのに時間がかかるし、そもそも、わたしに向けて喋っていると理解していなければ、音として認識できない。
　わたしはバカなので、集中して集中して集中して、やっと誰かと会話ができるのだけれど、ちょっとの時間で疲れ果ててしまうから、できれば会話はしたくない。
　わたしはバカなので、一度疲れてしまうとなにもできなくなるので、できるだけ会話はしたくない。
　わたしはバカなので、ずっと黙っていると、まるでわたしなんて存在しないみたいに周りが振る舞う。わたしはバカなので、仕方がないと思う。
　わたしはバカなので、そもそも、わたしなんて存在しないんじゃないか疑う。わたしはバカなので、わたしが架空の存在だと考える。
　わたしはバカなので、わかったような顔で頷く。わたしはバカなので、「はい」とだけ答える。わたしはバカなので、わかったフリをする。
　わたしはバカなので、バカなわたしを生かし続けなければならない。
　わたしはバカなので、生きなければならない。

「20周年！もうすぐオトナの超短編」はやみかつとし選　佳作

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