ある休日の昼下がり

 台所で手を洗うついでに顔も洗う。
 水道の水は温くて錆の味しかしない。カルキ臭と真夏の太陽の眩しさに吐き気がこみ上げる。
 息を詰めたのに、1/4にカットされたメロンの皮が、2つ薫る。生ゴミの中に埋もれながら、皮だけどんどん熟れているのだ。
 薫りに気圧され、たまらず吐く。さらにもう一度吐く。吐瀉物と熟れたメロンの混合気が、嘔吐中枢を刺激する。
 あの男との関係も熟れて腐って土に還ればいいのに。冷蔵庫に半分残ったメロンも、そう。
 口を拭いながらボンヤリ思う。きっと、頭の中が熟れて腐って土に還ろうとしてるのだ。
「詰まったら、めんどくさいなぁ」
 独り言は掠れ、喉の奥からは白いメロンの種が一粒飛び出した。

超短編 500文字の心臓
第29回自由題 投稿作

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