あホ毛

「ウチの田舎にさ」
「ホテルも旅館も人もなくて借金ばっかの」
「潰れかけたの生き延びちゃって困りもんなんだけど、近所に生協できたらコンビニ潰れちゃうような町なんだけど、そこに『あ○しやま』って鶏料理屋? あるんだ」
「熊とか鹿とかトドじゃなくて?」
「北海道馬鹿にすんな。思いつきだけで言ってんだろ?」
「生まれてこの方、思いつきだけで生きてきたから」
「なんだそれ」
「自慢?」
「でさぁ」
「話戻したし」
「『じゃ○ん』とかにも紹介されるよな店なんだけど、いかんせん田舎なもんだから、テキトーなんだよね」
「なにが?」
「半身の丸揚げとかマストなんだけど、だいたい毛が取り切れてなくて、パリパリの鶏皮に毛が残ってるから、実際は毛皮の丸揚げなわけだ」
「で?」
「『あ○しやま』でほおばる毛皮の丸揚げ。略して」

第1回 ノベルなび大賞授賞式 三題噺即興超短編
「嵐山」「ホテル」「毛皮」を用いること。
本作品はフィクションであり、実在のお店ではおいしい鳥料理が味わえます。

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