Autumn in Autumn
陽向のテラスに広げるケーキは2つ。貴方のと、わたしの。
秋晴れの15時過ぎは夕陽になりかけていて、一番寂しいけれど居心地がいい。
僕たちみたいだね。と、貴方が笑う。
そうですね。と、わたしが笑う。
夕陽色のダージリンのストレートに、赤いイチゴ。
苦みは一流の脇役。どんな味覚も、苦みの上に成り立っているなんて、青い頃には想像すらできない。
風がそよぐ。行儀悪く、トッピングのベリーを一粒ずつ、指で摘まんで食べる。
食べさせてあげるよ。と、あなたがおどける。
そんな歳じゃないですよ。と、わたしが微笑む。
青くもなければ赤くもない、橙色な紀にいるわたしたちが、やわらかいピンク色したイチゴムースの酸いや甘いを一番楽しめるに違いない。
夕陽はまだ輝いている。
「
コトリの宮殿 2号
」
ショート!ショート!ショート!ケーキ・ストーリーズ 未掲載作
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