Autumn in Autumn

 陽向のテラスに広げるケーキは2つ。貴方のと、わたしの。
 秋晴れの15時過ぎは夕陽になりかけていて、一番寂しいけれど居心地がいい。
 僕たちみたいだね。と、貴方が笑う。
 そうですね。と、わたしが笑う。
 夕陽色のダージリンのストレートに、赤いイチゴ。
 苦みは一流の脇役。どんな味覚も、苦みの上に成り立っているなんて、青い頃には想像すらできない。
 風がそよぐ。行儀悪く、トッピングのベリーを一粒ずつ、指で摘まんで食べる。
 食べさせてあげるよ。と、あなたがおどける。
 そんな歳じゃないですよ。と、わたしが微笑む。
 青くもなければ赤くもない、橙色な紀にいるわたしたちが、やわらかいピンク色したイチゴムースの酸いや甘いを一番楽しめるに違いない。
 夕陽はまだ輝いている。

コトリの宮殿 2号
ショート!ショート!ショート!ケーキ・ストーリーズ 未掲載作

(ケータイ)トップ > 空虹桜超短編集 エディアカラ > Autumn in Autumn
(パソコン)トップ > 空虹桜短編集 バージェス頁岩 > Autumn in Autumn
空虹桜HP アノマロカリスBANNER
(C) Copyright SORANIJI Sakura,2012
e-mail bacteria@gennari.net