オートマティスム

『お色直しの間、皆様には新郎新婦が晴れの日を迎えるまでの写真をご覧いただきます』
「遅かったねぇ」
 式場に入るなり暗くなってしまい、戸惑っていると高校の友人が声を掛けてくれた。
「ホント、天気雨なのに土砂降りって異常気象すぎない?」
 同じテーブルの懐かしい顔に挨拶し、立っていたボーイに白ワインを頼む。
 スクリーンに映し出された新郎の写真。いくつかのテーブルでは笑い声が上がるけど、面識が無いのでつまらない。
 そもそも、なぜわたしは披露宴に呼ばれたのか? たしかに高校一年の時は同じクラスでわりと仲も良かったが、クラス替えで離れてからは挨拶する程度で、卒業後は年賀状をやりとりすることすらなかった。なのに届いた招待状。
「わっ、懐かしぃ」
 友人の声につられて見ると、いつの間にか新婦の姿。わたしと一緒に人差し指で十円玉越しにレンズ……ありえない。たしかにあの時、わたしと彼女は……でも、帰った……
 光。
 奔るスポットライトの奥で扉が開く。白無垢姿の新婦の目は記憶よりもつり上がっている。
 新郎新婦は一礼してから「コン」と啼いた。

第6回ビーケーワン怪談大賞 投稿作

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