金属バット

 もっとも簡単に人を黙らせるには、殴りつければ良い。
 そんなわけで手を伸ばし、そのまま掴んでヤツを殴ったら、カーンッと甲高い音とともに得物が裂けた。
 本来ならヤツから吹き出すはずの脳漿や血液、その他諸々がピューッと吹き出し、一面に降り注いだ。
 呆気にとられたのも束の間。吹き出す勢いはすぐに弱まった。悔しいやらわけわかんないやらで、裂け目に手を突っ込んだら肩口までスポッと収まった。
 結んで開いて、グッパッグッパッしたところでなにも触れない。それどころか裂け目は閉じてしまった。
 トンファーみたいで、殴りやすくなったこの新しい腕で今度こそ!と思ったら、ヤツの頭に俺の腕が咲いていた。
 まったく。ヤツの笑い声は腹立たしい。

超短編 500文字の心臓
第39回競作「金属バット」参加作

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