青い鳥 -sing a song ver.-

――そう
――わたしたちの世界は自由だよ
――戦い続けなきゃだけど自由だよ

 頭の中で彼女が唄う。どこか気怠そうに。しかし、芯の通ったリッチな声は、耳から外に漏れ出しているんじゃないかと不安になる。穴という穴から発散される振動は、きっとその内どこかの誰かと共振して、まさしく音として再生される予感がある。
 そういう音楽を頭の中で彼女が唄う。
 幸せなんて、あの日、黒い波が沖まで持ち去ってしまったけど、頭の中の彼女が発する波は鮮やかな憂鬱のブルー。飲み込まれたらきっと、どこにもたどり着かない。

 だから、自由。

 誰かに付き従い、導かれることを拒絶したわたしの頭の中で、彼女が唄う。飲み込まれはしない。煽動されもしない。これはわたし頭の中だから。どこまでも、響け。広がれ。命令形で唄う。

超短編 500文字の心臓
第123回競作「青い鳥」未投稿作

トップ > 空虹桜短編集 バージェス頁岩 > 青い鳥 -sing a song ver.-
空虹桜HP アノマロカリスBANNER
(C) Copyright SORANIJI Sakura,2013
e-mail bacteria@gennari.net