青い鳥 -true side MIX-

 どこぞの猫じゃないから俺には名前がある。だが、家主の兄妹は阿呆だから、俺のことを「クロ」と呼ぶ。最初は兄妹揃って色盲を疑ったが、描いた絵は空や緑を塗り分けていた。ともかく、阿呆な兄妹は薄気味悪い婆さんに唆されて、このクソ寒い中、どこかへ行ってしまった。
 勿論、俺をおいて。
 阿呆だとわかってはいたが、大概にしろよ! と、吠えたところで、
「クッククック」
 と自分の名前しか声にできなくて嫌気が差した。
 鳥籠の鍵は開けられるし、餌の在処は把握していたが、いかんせんこの寒さはどうしようもなく、俺は飛ぶ食う寝るをひたすらループした。日付感覚が消失した頃には阿呆な兄妹への情や愛想は尽きた。むしろ、尽きない方がどうかしている。マザーテレサかお釈迦様にでもなればいい。あまつさえ、ようやく帰ってきた阿呆な兄妹は、薄気味悪い婆さんに俺をくれてやるなどと抜かしやがった。他人事なら最高の笑い話でも、当事者としては付き合いきれない。
 俺の所有権は俺にある。嬢ちゃんの療養にも飽きた。さぁ、あの雲の向こうへ!

超短編 500文字の心臓
第123回競作「青い鳥」参加作

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