ベリリウム

 自分が「強い」と思ったことはないのだけれど頑固だとは思う。違う。客観的に見て頑固だ。妥協するのは話が先に進まないから。
 なので、心を澱引きする必要に迫られる。不定期に。何度も。何度も。何度も。
 引いた澱は硬化剤として有効だ。どんなに頑固な心でも摩耗し、すり減るから、もう一度寄せ集めて固める必要に迫られる。
 軽くて剛性が大きい心。
 しかし、不純物が紛れ込んだ。あるいは、結合して化学式が変化した。
 なにが?と問われれば、ありきたりな言葉で言うと「愛」だろう。恥ずかしげもなく言えば「恋」かもしれないけれど、「愛」と「恋」の違いがよくわからないから区別しない。
 透明なのに、硬い、色濃い、愛。あるいは恋。
 軽くて剛性が大きい心をぎゅっと掴む感情。
 コントロールできない、なにか。

元素12ヶ月を改訂

トップ > 空虹桜短編集 バージェス頁岩 > ベリリウム
空虹桜HP アノマロカリスBANNER
(C) Copyright SORANIJI Sakura,2023-2024
e-mail bacteria@gennari.net