朝餉
「やっぱ今日の味噌汁臭いね」
立ちのぼる湯気が濃く見えるけど、気のせいに違いない。
「しかたないでしょ。それより遅刻するわよ」
台所に立つ母さんは、動きからして、なにかを弁当箱に詰めている。
「けど……」
おそるおそる一口すする。
「なんかジャリジャリしてるけど、骨からダシとった?」
具は髪の毛とネギだけなのに脂が浮いている。
「供養だからね」
母さんの言葉がなんだか遠くに聞こえる。
「骨まで食べてあげなきゃ、お父さん成仏できないわよ」
父さんの血で溶いた卵焼きは、やっぱり錆の味がした。
「夕飯は焼き肉だから」
気がつけば、赤い黒飯の上に父さんの生首が浮かんでいる。
「明日の朝も父さんとかイヤだから」
生首の父さんがなぜかウィンクしたので、開いてる方から眼球が転げ落ちた。
超短編 500文字の心臓
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