這い回る蝶々

 彼らの越冬は特筆に値する。
 繁殖期、初雪を切っ掛けに雄はいくつかの群れを成す。
 上空から見ると、白いキャンパスに己の姿を描いたかような群は、しばらくすると隣接の群へと突撃し、さらに大きな群れを成す。五百頭を超える巨大群同士が地上を蠢き、衝突・融合する様は怪獣映画さながらだ。
 これによって、成虫での越冬と同時に自然淘汰が行われ、最終的に群で生き延びた一頭だけが、春に羽化した多数の雌との間に子孫を残す。
 なお、現地の胡族では群を鱗粉転写した布を、死者への供物とする。

超短編 500文字の心臓
第66回競作「這い回る蝶々」参加作

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