キャメル・クラッチ

 ラクダのシルエットが遠くを歩いていて、君は目掛けて大きな声を出すのだけど、全然気づいてもらえない。
 微風が顔を撫でる。
 君は孤独を感じているし、月から方位を割り出すことができても、街がどの方角にあるのかを知らない。
 月は天高くで微笑む。
 夢ならばいいのに! と、君は思わない。ありきたりな思考は既に過去で消化してしまったからだ。
 砂の囁きが小さく聞こえる。
 諦めることは簡単で、事実、ラクダのシルエットはさらに遠くへ行ってしまった。だから、君は歩きはじめる。
 止まらぬ臓器が内から君をノックする。
 おそらく、君は悟るのだ。
 砂漠は優しい。

怪の旅投稿作

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