冷えた椅子 零下25度MIX
手袋をはかないから、ドアノブが一番冷たい。
入ったらすぐ玄関を閉めてカギをかける。わずかな隙間からでも雪は忍び込むから。
電気を点けて、靴を脱ぐ。つま先立ちでフローリングの上を歩く。瞬間、靴下がフローリングに貼りつく。
毎日水を落とすのが面倒なので、ストーブは点けっぱなし。
それでも温度設定を一番低くして家を出るから、息は白く、部屋の隅は寒い。
木製の椅子はそこにある。
温度設定を上げてからコートを脱ぐ。まだ椅子には座らない。
最後の最後、空気がカラカラに乾くぐらい暖まってから、椅子に座るのだ。
曖昧なままに冷えた椅子。
冬だけの幸せ。
超短編 500文字の心臓
第33回競作「冷えた椅子」参加作 零下25度MIX
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