川を下る 〜 北海幹線用水路を下る

「いつか書きたいと思ってたネタなんですけど」
「とりあえず聞きましょう」
「ウチの田舎に約80kmの川があるんです。人工の」
「人工?」
「正式には『北海幹線用水路』っていうんですけど、自然流下で灌漑用水を石狩平野に流してる」
「へぇ。それで? なにを書くんです?」
「地の話を。北海頭首工にある北海水神宮から焼山水路橋にペンケ水路橋、光珠内調整池や市来知幹線を経由し、夕張川揚水と合流して、終点の農業用水路に接続されるまでを」
「誰が読むんですか?」
「ですよねぇ・・・『川の名前』や『サマーバケーションEP』には長すぎるし。『鉄塔 武蔵野線』ならいけるかな? でも、川の周りには文明があって、ミシシッピ川筆頭に音楽があるんです。『神田川』じゃないけど、たとえば三笠通るから『北海盆踊り』とか、ウチの田舎だったら『火噸節』とか」
「マイナ過ぎですよ」
「でも、地の音楽を誰かがちゃんと綴らないと」
「それは文化人類学とかの領分じゃ無いですか?」
「売り上げだけだったら『遠野物語』は同人誌ですよ」
「だいぶ上からですね」
「物書き名乗ってるんだから、恥ずかしげなんかとっくに捨ててます

超短編 500文字の心臓
第177回競作「川を下る」逆選王作を修正

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