ダイヤモンドフィッシュ
ブリリアントカットされたクリスタルガラスを強く握る。発見されたままの形で白く封印された時間は、深海を泳ぐために鱗の組成を八面体構造へ変化させるほど永く強い。パビリオンの尖端が右手のひらに食い込むので、さらに握りしめた。
5億年あればモース硬度で10を獲得できるのに、わたしはたかが24年に潰され、溺れている。水深1万メートルに比べれば、この世界を泳ぐことは容易いはずなのに。
握り疲れた右手からクリスタルガラスが零れる。深海を照らせぬ陽は、内側で全反射せず、封印された時間に乱される。
取り上げて、今度は左手で強く握る。パビリオンの尖端が左手のひらに食い込むので、さらに握りしめた。
ソーダガラスでいいから、わたしを守る鱗が欲しい。
超短編 500文字の心臓
超短篇競作トーナメント大会「Microstory Grand-Prix 2006」
1回戦 第16試合出場作
(ケータイ)
トップ
>
空虹桜
超短編集 エディアカラ
> ダイヤモンドフィッシュ
(パソコン)
トップ
>
空虹桜
短編集 バージェス頁岩
> ダイヤモンドフィッシュ
(C) Copyright SORANIJI Sakura,2006
e-mail
bacteria@gennari.net