少女、銀河を作る(オーセンティック・エディション)

 自室の窓から、ポワンとともる眼下の街灯を何の気なしに眺めていたら、そのすこし先に超空洞が100パーセクほど口を開けていたので、これは誰かがブラックホールのひとつも持ってこないか? と、愉しくなった。
 グラスのウイスキーは半分ほど残っていたが、これでは足りぬ。星をいくつか捕まえて絞り、三日月でかき混ぜて即席のハイボールにした。
「その渦巻き、ひとつくださいな」
 窓越しから矢庭に声をかけられ、すこしの驚きを持って窓を開けると、乙女座の弟子か、あるいはアンドロメダ座の玄孫か、女の子がフワリとスカートを広げて一礼した。
「ハイボール一杯で足りますか?」
「勢いさえつけば、あとは勝手に回りますもの」
 そう言うと、女の子はヒョイとグラスを持ち上げて、超空洞に投げ込んだ。
「よいお手前で」
 コントロールを褒めると、女の子がはにかんでまた一礼。
 すると、どこからともなく星間物質や宇宙塵、ダークマターなどが集まってくる。
 グラスに刺さっていた三日月は、よもや己が中心になるとは思わず、自分のいない夜空へ「ハレルヤ!」と叫んだ。

超短編 500文字の心臓
第183回競作「少女、銀河を作る」参加作

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