ぐしゃ
目が醒めた。
「ちっ」
まだ生きてることへの腹立ちが、口から漏れた。
仰向けの体を転がし、手を伸ばす。固く、柔らかく、小さく尖った感触。音。
音。
その手の甲で目を擦る。瞼を開くと残虐的な夏の陽射しが、眼球から視神経に至るまでを焼く。脳味噌まで焼いてくれればいいのに。
毎日繰り返す無意味な祈り。
ここが何処かを思い出す。
寝起きがてらにゴキブリ握りつぶすなんて、そりゃ死ぬハズないわな。
起き上がりしな、零れた声のない笑い。手の中の汚物を犬の糞やらとまぜこぜに踏みつける。
体が水を求めるのは反射的で、抑制できないほど脳味噌はヤられてる。
なのに、生きることは止められず、死は選択されない。
握りつぶした、踏みつけた、感触が、音が、急き立てる。
世界は、相変わらず不愉快だ。
超短編 500文字の心臓
第108回競作「ぐしゃ」参加作
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