ハジマリのうた
そうだねぇ。全然大好きだったのに、それこそ手羽先みたいになったおじいちゃんの体拭いてても、ちっとも泣けなくてさ。ショックだったっていうか、冷静な自分に感動したというか。
あと何時間かすれば骨だけになるんだよなぁ思ったら、なんだか感傷と感情が釣り合わなくて、寝ずの番してたわけじゃないけど、泊まった葬儀場の町内会館からなんとなく散歩に出たんだ。ホント昔よく散歩したんだ。おじいちゃんち界隈の町内一周。夜っても夏の4時過ぎだからそんなに暗くなくて。
でさ、最近ってもその当時で既に5年ぐらい経ってんだけど、新しい団地のクリーム色の壁に朝顔の蔓が伸びてて、朝焼けの空と青い朝顔がなんかその時初めて、花って綺麗だなぁと思ったんだ。いや違うな。たぶん「綺麗」だとか「美」だとかの概念というか意味をようやく理解できたんだと思う。
そしたら、やっと泣けて。
だから、わたしにとって“あ”は「あおいあさがお」の“あ”。
第4回「
超短編のパトロン
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