ほくほく街道 - FG mix

「北前船ってのがあってだよ」
 オッサンの有り難い高説中に呑む酒は、たまらなくマズいので、せめて一杯ぐらい奢れよな。と思うのだけどグッと我慢する。
「舞鶴から、荒れる日本海を新潟山形秋田青森と北上してくのだけど、初っ端で能登半島がつっと邪魔しとるわけだ」
 お前、全石川県民に土下座で謝罪しろよ?
「すみませーん。『手取川』の純米吟醸、グラスで」
 呑まなやってられんて。
「いいねぇ。純米吟醸ってお米を」
「あっ、唎酒師持ってんで」
 安いマウント取りに来んなや
「えっ……凄いなぁ……となれば、能登で風待ちすることになるから、北陸と東北・北海道の結びつきは強くなったわけだ」
 酔っ払いの戯れ言でも「となれば」ぐらい正しく使え。「となれば」ぐらい
「海廊は対馬海流に合わせて毎年変わるけど、山や岩くれは動かないので目印になる」
 そりゃなー。
 なんなんだよ。この話。
「そうして、北陸から北の港町をつなぐ海道ができ、開拓使が終点の名前にしたと」
「嘘ですよね? それ」
 薄っぺらな蘊蓄もどき。
「バレた? でも、『ほくほくフィナンシャルグループ』の由来は、そんな感じだよ」
 知らねぇよ!

超短編 500文字の心臓
第185回競作「ほくほく街道」参加作

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