いちごがかわいい

 だから、わたしは甘いものを食べる。
 これはゲームなのだ。どのように「好き」と言わせるかの。
 ちょっとだけのチャーミングとエロティシズムを交えて食べる。
 好きではないことが多すぎて、わたしが生きていくには過酷だ。ただ、「好き」という言葉は好き。
 いちごのタルトを食べる。
 平均値からのブレ幅が、ウィークポイントかチャームポイントとなり、それがハマるか否かが、攻略の鍵になる。
 でも、パティシエに失礼の無いよう食べる。
 おいしいは、好きの関数ではない。
 いちごも、生クリームも、タルトも好きではないけど食べる。
 口の中のいちごを、タルト生地を、飲み下す前に「好き」と言って。
 目の前の彼に、最大公約数的な「好みの女」に見えるよう食べる。

ケーキの超短編「いちごのタルト」投稿作

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