「長女のわたしは、長女なので、他の弟妹より先に生まれました。遅い子どもでしたけれど、弟妹が続いたので、物心ついた頃には「いろは」の順で名前となりました。
父も母も頭が弱かったので仕方ありません。
けれど、飢饉で弟妹は死に、わたしは売られました。だからずっと、父や母にとってわたしは『い』です」
「なぁウチ、ずっとずっと言うたよなぁ。なんで、おとうもおかあもウチの言うこと聞いてくれんかったのやろ。ウチが『行きたくない』言ってる間、ずっと知らんもん見てる目しとった。
ハハハ。
おとうもおかあもとっくに屍。ウチ売ってまで生き延びたのに、生きることに執着しても死ぬんや。嗚呼」
超短編 500文字の心臓
第188回競作「いやや」参加作