自転車に乗って
想いは行動で示すしかなくて、僕は必死でペダルを漕ぐ。
大きく左に曲がったカーブは、いつかの映画のように、その頂点で右へとカーブする――
「ねぇ、ちょっと。重かったらアタシ降りるよ」
子どもの頃から何度となく、上り下りを繰り返したこの坂。
「いいから。黙って掴まってろ」
ギュッと、腰に回された腕に力が籠もる。
ガキの頃はあんなに軽かったペダルが、すっかり運動不足になってしまった足には重い。
もちろん、彼女を後ろに乗せているからでもある。
心には重すぎて、言葉には軽すぎる。
「あっ」
彼女が息を呑む。
額から流れた汗と潮風が鼻孔をくすぐる。
「そうだ!これが僕の街だ!」
うんざりするほど長い下り坂を、今はとても軽やかに。
超短編 500文字の心臓
第2回トーナメント一回戦第4試合
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