JUMP

 目の前に階段がある。5段きっかし階段がある。俺はこの階段を降りようとしている。降りるさ。降りてやるさ。さらには、俺と同じように目の前の階段を降りようとしているオッサンがいる。いかにもなオッサンだ。皆まで言うのは不粋なほどのオッサンだ。
 オッサンと俺の年齢差は小学校程度。つまり、1/2の確率で俺もオッサンだ。嗚呼、オッサンだ。認めないほど若くはない。そして、オッサンと俺の相対速度はわずかに俺がプラス。つまり、速い。ならば前に割り込む。この二人しかいない地下道でも割り込む。そして俺は踏み切るのだ。翔ぶのだ。迷いは無い。躊躇も無い。怯まず翔べよ。わずか5段! 今日の生はすべて、この跳躍のために!!

「超短編の世界-Vol.2− 笑いの超短編」未掲載作

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