K
向かい風。風速1.2mが頬に堅く鋭い鑢をかけ、耳元で囁く。
吹雪いてないから、札幌の街が見える。カラフルに白をまぶした雪の街。大倉山のカンテから見る札幌が好きだ。
旗が降られる。ゴーグルの位置を直す。息を吸う瞬間、風が変わらないと信じる。
木々がゆっくりと急速に滲んで黒い線になる。鑢が鉋になって、体を削っていく音がする。流線形。漸近して、白いアプローチを貫く一色の流線型。
膝と太ももが悲鳴をあげて、圧縮された超新星みたいに流線型を宙へ破裂させる。
一瞬、音が止む。
バランスだけに気をつける。捕まえた風が悲鳴をあげる。札幌の街中へ、ひとり落ちていく実感。何十回飛んでも、空で見る札幌が一番好きだ。
広げた体に風を受け、重力に引き寄せられる流線形の俺よ。あの点を、120mを越えて、飛べ。飛んでけ!
超短編 500文字の心臓
第110回競作「K」参加作
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