暮れる朝

ひかりの門 【名所旧跡】

 夏至の日の出は、町制20周年を記念して建てられた門の中心からはじまります。
 門が建てられたのは、町を北から南へ流れる「ひかり川」と、東から流れ込む「きらめき川」が合流する地点です。そのため、わりと町中にもかかわらず、日の出を観測することができます。
 門を中心に周辺は公園となっており、夏至を挟んで3日間は「ひかりの祭典 フェスティバル&カーニバル」が開催されています。
 また、「ひかりの門」から400mほど離れた対岸では環状列石が発見されており、縄文時代から信仰の地になっていたと考えられています。


「こんな町、早く出ようぜ」
 リョータはセックスのあと、必ずわたしの髪を撫でながらそう言う。ほんの二・三時間前にも。
 わたしはいつも「そうだね」と応えた。昨日までは。
「いつ? どこへ?」
 どうして? と、自問したとこで、なんとなくでしかない。零れる言葉は、いけないと思っても、体を重ねるのと同じくらい、惰性。
 それからのお決まりな展開は、無惨で覚えていない。わたしは最低限の衣服を身に纏い、未明の川べりを歩いている。「もう一枚着てくれば良かったな」と思える程度に落ち着いている自覚がある。「今日は仕事休もうかなぁ」と、スケジュールを思い返す余裕も、たしかにある。
 田舎で年月を重ねたカップルが行き着く先のひとつ。ありきたりなバッドエンド。リョータが長男でわたしが一人っ子だから、わたしから切り出すだろうこと、何年も前から気づいていた。
 川向こうで歓声が上がる。ビックリしてわたしはそちらを見た。
「っ!」
 キラキラ光る川面の奥には「ひかりの門」があって、その向こうには顔を出したばかりだろう太陽と朝焼け。
 映画みたいな展開に、悔しいけど涙が出た。

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