まるで正しい祈りのように
不覚にも、夏の終わりな高い高い青空へ昇るきのこ雲を、綺麗だと思った。50km離れた故郷が灰塵に帰したというのに。
世界の終わりのはじまりは、黙示録に語られたがごとく管楽器で迎えられず、ひたすらヘリコプタのロータが拍を取る。
宙から雲越しに見る爆心地に故郷の面影はない。同心円を描いた土塊が、指ぬきみたいな外輪山を形成する。
涙が出ない。感情は動けない。いつの間に息を詰め、途端に咳き込む。息を吸いすぎないよう警告される。
風切り音が残った雲をかき混ぜていく。
「
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」三題噺「キノコ」「楽器」「指ぬき」 投稿作
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