大人びた感のある紺地の浴衣を纏った娘と手をつなぐ。
娘にはすこし早いかと思ったけれど、父親の贔屓目を差し引いても可愛い。
けれど、所詮女だ。
穢らわしい。
家族三人水入らず。絵に描いたような団欒。
この絵を描くために殺してきた自分を弔う花火は八時から。
好みの男が視界を掠めないかと、わたしは人混みを見る。
全然夜でもやっぱり外は暑いのに、パパもママも冷たい手。
そんなんだから、裏のスズキさんや向かいのサトウさんがなんて言ってるか知らないんだ。
「手が冷たい人は心が温かい」って絶対嘘。
思うんだ。わたしは、たまたまパパとママがパパとママの役になったママゴトに、子ども役で混ざってるのカモって。
「パパ。プリキュアのお面欲しい」
だから、こんなのっぺりしたプラスチック、ホントは欲しくないの知ってるよね?
超短編 500文字の心臓
第72回競作「仮面」参加作