酩酊賛歌

ハレさん水・ガネさん水 【おみやげ】

(from 脳内亭

ふうせん横町 【隠れ家的スポット】

(from 加楽幽明)

第三公園 【あそぶ】

(from 佐多椋)

***

オノノキの刺身 【和食】

 ふうせん横丁でもずいぶんと奥にある酒処「晴々」でのみ味わえる幻の一品。
 味は円やかでほろ苦く、甘く世知辛いとか。どうも聞く人・食べた人によって感想が異なるので、あなたの感想もお聞かせください♪
 最後の一切れが皿の上にある。見えないけどたしかにある。今、我ら酔っ払い四人組へ存在感をアッピールしている。
 つまり、我々は日本人力を試されている。食べたいか? 食べたくないか? 誰が手を伸ばすのか? それが肝心だ。
 本来、酔っ払いに飲食は不要であり、食い気より呑み気なのである。しかし、見えないのに卓越なる存在感を放つオノノキの刺身を前にして、日本人がだんまりを決め込むことができようか? いや、できない。
 ハレさん水やガネさん水と旨い酒があり、オノノキの刺身なんて旨い肴があるのだから、欲求と謙虚の間で惑う。そして、酔う。
 我ら酔っ払いは目線を交わすことなく、朗らかに馬鹿話を繰り広げ、互いを牽制する。店のカンバンは、ふうせんとともに飛んでいく。酒酔いか乗り物酔いかすら不明のまま、我ら酔っ払いも、オノノキの刺身も、宙へ浮かんでさらに酔いが回る。

ひかり町ガイドブック別冊・グルメ特集」掲載作

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