その瞬間 - a flash -
「
悪い予感って、
だいたい当たんだよねぇ
」
電子タバコじゃ画にならないと苦笑する彼女へ「何時代?」と混ぜっ返したけど、たしかに彼女の細い指にオモチャな機械は大きすぎる。
「
祖父が亡くなった夜も、
ずっと吐き気と闘ってた
」
「今日は何時から?」
「
目が覚めた時から臭いなぁって。
なんか教室の後ろの雑巾を湿気らせたみたいな
」
「早ッ」
「
その結果がこれ
」
こちらを指差す。
「なるほど」
「
自分で言う?
」
彼女は大きく笑ってもう一服。
「
エログロって、
結局、
同じこと指してんだね
」
「何時決めたの?」
ここで訊かなければ、もう訊ける気がしない。知りたいことを知らずに終われない。
「
ん?
あなたの歯がヤケに白く見えたから
」
「えっ?」
「
壊したいなって
」
聞きたかった言葉はこれだったか。
超短編 500文字の心臓
第175回競作「その瞬間」未投稿作
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