その瞬間 - Life -
侮るな。
呆れるぐらい、お前の命は生きざるを得ない。お前の魂は生きたがっている。蚯蚓だって、螻蛄だって、水馬だって、ウイルスだって、菌だって、みんなみんな生きているが友達ではない。
だから、どれほど蝕まれようとも、生きることを止めることはできない。病むことは闇ではない。傷みが、脳が死を渇望しても体は細胞は呼吸し続ける。頼まれなくても生きてしまう。乞うことなく脈動する。
「
何故?
」
くだらない。命は常に生きるのだ。だから生命。どれだけお前が死を求めても、切望しようとも、呆れるほどに命は生を叫ぶ。叫ばずにはいられない。そのようにプログラムされた塩基配列は絶望的に命をつなぐ。
気付け。
自覚しろ。
お前は、お前の生は命の奴隷だ。生きられるだけ生きるしかない。死ぬまで生きろ。金が無くても、愛が無くても、夢が無くても生きろ。苦しんで苦しんで、苦しんでそれでも生きろ。溢れる命が燃え尽きるまで。後悔しろ。後には引けない。生きることにのみ価値がある。
生を呪い、這いつくばって生き抜け。
超短編 500文字の心臓
第175回競作「その瞬間」投稿作
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