わたしの救世主

 不幸になればいい。
 極々自然な願いだよね。人間生きてりゃ、他人を呪詛したのは一度や二度じゃないハズで、たぶん、お釈迦様だって恨み節を切々と説いてたに違いない。なにせ、三回までは赦してもらえるのだから。ただ、あれって三回目には怒られるからセーフなのは二回まで。
 つまり、わたしは怒っていい

 この「大ナントカ寺」——聞けばわかるけど「ナントカ」って読みはいつも思い出せない——には、エンマ堂と十王堂とウェルギリウス堂があって、エンマも漢字書けないけど読みは覚えてる。ウェルギリウス堂では、地獄に連れてって欲しい人を紹介すると、ホントに連れてってくれるらしい。
 市の指定史跡は嘘を吐けない。
 わたしは、だから、ここにいる。

 祈りはとても強い。
 写真と髪と、あと秘密のなにかをエンマ堂と十王堂とウェルギリウス堂へ順番にお供えして祈る。アイツが不幸になればいい。アイツが地獄に落ちればいいと祈る。仏様いないけど、エンマ様と十王様と神様?に祈る。ちゃんと祈る。誠心誠意祈る。徹頭徹尾祈る。祈る。祈る。
 たぶん、わたしは報われていい

お笑い大惨寺・超短編1月「大惨寺観光ガイド」未投稿作を改訂

トップ > 空虹桜短編集 バージェス頁岩 > わたしの救世主
空虹桜HP アノマロカリスBANNER
(C) Copyright SORANIJI Sakura,2024-2025
e-mail bacteria@gennari.net