きっと悪い人ではない
「そこの黒髪短髪中肉中背の白Tシャツ!お前だ。お前!!」
「ん?えっ?俺?俺ッスか?なんッスか?おまわりさん」
「お前、マスクはどうした」
「ついさっきまで、熱射病になりかけたからコンビニでいたんッスよ」
「だからどうした」
「いや、そん時外したマスク落しちゃって」
「逮捕だ!この非国民め!!」
「え?たしかに自民党嫌いですけど、天皇陛下は好きッスよ」
「五月蠅い。言い逃れするな」
「だいたい非国民って」
「民度の高い日本人のクセに、新宿駅前でマスクをしないのは非国民に違いない。国家反逆罪で逮捕だ」
「うわっ。なに言ってるかわかんね」
「詳しいことは派出所で聞くから」
「おまわりさん、日本語通じてますかぁ?」
「貴様、本官を侮辱するのか!」
「『本官』とか、2時間ドラマだけと思ってた」
「国家反逆罪に公務執行妨害。現行犯で逮捕する」
「うっそー。マジ手錠?ありかよ。そんなの」
「逮捕だ逮捕!」
「君。君。そこの警官コスの君」
『えっ?』
「騒ぎってから来てみたら、君、『マスク教』だね?」
「チッ!」
「困るんだよねぇ。そういうことされると。ちょっと、書類作るのに協力してもらえるかな?」
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