窒素

 ありふれたこの日常。この魂。誰もが誰かと同じよなことしか考えてないのに、自分こそが唯一無二と信じて疑わない。周りの人間を馬鹿だ無脳だと罵り、己だけが悟った仏陀であるかのように教え諭そうとする。
 有り体に言えば「地獄」なのだけど、なら、これは何地獄なのか? 物の本で読み知った知識に、この地獄を表す地獄は見当たらない。

 新しい地獄。new hell

 新しいことが良いことならば、ならばたぶん、地獄が生まれることは良いことだ。地獄創成は地方創生より簡単で、すでにある地方を作ることは出来ないけれど、地獄には広大な未確定領域が存在する。いくらでも地獄を定義できる。ブルーオーシャンな地獄。母なる青い地獄。未来永劫、遍く数多の地獄が生まれるなら、世界はクリエイティヴでアグレッシヴなのかもしれない。

 そこまで考えたら、窒息するよな苦しみが、ちょっとだけ楽になった。

元素12ヶ月を改訂

トップ > 空虹桜短編集 バージェス頁岩 > 窒素
空虹桜HP アノマロカリスBANNER
(C) Copyright SORANIJI Sakura,2023-2024
e-mail bacteria@gennari.net